長尾重武『建築家レオナルド・ダ・ヴィンチ:ルネサンス期の理想都市像』

 ミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチ。音楽家として、ミラノの宮廷に派遣され、音楽家や建築家との交際から、建築の理論方面へと、興味を広げていく過程を描く。30歳から、17年間、ここでレオナルドは円熟期を迎える。各地の建築物の調査や、飛翔機械の研究、解剖学への取り組みなど、さまざまな取り組みを行う。フランス王のイタリア侵攻とミラノ公国の崩壊によって、避難、そして流浪を強いられなければ、まとまった形で成果が残ったのかもな。
 昔、レポートを書くために参考文献として買った本。一度通読しているはずなのだが、全然憶えていないな。当時の私は、全然歯が立たなかったと言うことだろう。今回も、歯が立ったかというと、微妙な気がする。本棚の新書を整理しようとして、逆に本を読み出して、整理にならないパターン。
 レオナルド・ダ・ヴィンチについて、革新的な絵画を描いたが、きわめて寡作な人。あとは、篭って雑多なメモを書き散らしていた人という、かなり失礼なイメージを持っていた。しかし、本書を読むと、さまざまな学者や芸術家との交際を通じて、その学識は知られていたんだな。だからこそ、ミラノを追われたあと、あちこち移動しつつも、とりあえずパトロンには困らなかったと。
 建築家としては、ミラノの都市改造や拡張をめぐる調査や理論的考察、理想都市の追及。ミラノやパヴィアの大聖堂建設への関与。理想的な聖堂建築の探求など。また、祝祭時の演劇や見世物の設計監督といった実用的な仕事もしていたそうだ。
 二重螺旋階段の研究と、それが他に与えた影響。さらに、さざえ堂まで影響を与えているのではないかという指摘は興味深い。
 あるいは、建築的な思考が絵画に与えた影響として、「最後の晩餐」の空間に対する考え方を紹介している。
 とりあえず、細かいところに関しては、理解しているとはとても言い難いので、まとめなおすのは無理だな。