- 作者: 山辺規子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1996/05
- メディア: 単行本
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在地勢力、ランゴバルド系諸侯、ビザンツ帝国の出先機関、イスラム系の地域勢力など、様々な勢力が抗争を続ける混沌とした11世紀の南イタリア。ノルマンディーでは出世の望みがない騎士たちが、一攫千金を求めて、傭兵として入り込む。その中で、オートヴィル家の兄弟は、リーダーとして頭角を現す。なかでも、無類の戦上手であるロベール・ギスカールは、実力で、南イタリアに統一をもたらす。教皇と皇帝の対立、ビザンツ帝国などを利用して実益を得て、反乱が起きれば撃破、最後はビザンツ征服を目指してギリシアに渡ると波乱万丈の生涯。
英雄たるロベール・ギスカールと、微妙な距離を維持しつつ、その弟のロジェールはシチリア・プーリア地方の征服を進める。ギリシャ系、ムスリム、カトリックと、宗教民族が入り乱れるシチリアを、バランスをとりつつ、治め。ロベール・ギスカール死後の後継者争いの中で、漁夫の利を得る。その息子のロジェール(ルッジェーロ2世)の治世は長年にわたり、軍事より内政を重視した方針でシチリアの安定を達成。ある意味では、シチリア王国ってのは、ルッジェーロ2世の作品という感じがするな。
その後、シチリア王位は、子のグリエルモ、孫のグリエルモと引き継がれるが、孫の世代で断絶。傍系のタンクレディが王位を継承する。しかし、直系の断絶は、王の地位を不安定化させる。女系から王位を要求する神聖ローマ皇帝との対立の中で、タンクレディは病死。王位はオートヴィル家からホーエンシュタウフェン家に移ることになる。なんか、タンクレディってあっさり敗れた印象をもっていたが、一度はハインリヒを撃退していたんだな。頑張ってたんだ。
エピソードは、ロベール・ギスカールの庶子であるボエモントの十字軍従軍記。なんというか、十字軍ってグダグダだったんだな。ムスリム側も分裂していなければ、確実に負けていたんじゃなかろうか。そして、戦となると、無類の強さを発揮するボエモント。苦しい包囲戦で、アンティオキアを攻め落とし、ボエモントはそこの支配者に納まる。その後は、国を作るための努力。さらに、ヨーロッパに戻り、ビザンツ帝国に戦争をしかけたり。
しかし、12世紀あたりまでの、王権の継承ルールって不安定だったんだな。直系の男子が絶えると、他所から王位を要求する勢力が攻撃を仕掛けてくる。フランスのカペー朝の、直系の男子がずっと続いた状況ってのは、本当に奇跡的なものだったんだな。