- 作者: 土屋健,群馬県立自然史博物館
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2014/07/19
- メディア: 単行本
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全体は6章構成。最初にフンスリュック・スレートの化石の紹介。ライニー・チャートによる生物の陸上進出、魚類の多様化、同時代の他の生物たち、デボン紀の大量絶滅、脊椎動物の上陸の動きが紹介される。こうやって、体系的に紹介されると、どの時代もなかなかおもしろい。あと、フンスリュック・スレートから産出する化石の見事さと言ったら。
アノマロカリスの末裔が、この時代にも余喘を保っているというのが驚き。
維管束植物が地上に出現するのも、この時代。そして、それを利用するダニやトビムシの仲間。そして、昆虫やクモの仲間なども登場する。
水中では、魚類の多様化が始まる。顎をもたない甲冑魚、無顎類が多様化し、繁栄するが、同時代には既に有顎類も登場し、デボン紀の末にはとってかわられることになる。その中でも、板皮類がこの時代には繁栄する。これも甲冑魚。最近は、CTで立体的に研究するのが、基本となりつつあるのだな。へその緒があったり、脊椎動物の分化の根元近くにいたりと、トピックに富む生き物らしい。
他にも、サメの仲間の軟骨魚類、棘魚類、シーラカンスの仲間の肉鰭類、肺魚類などが勃興する。一方で、現在、生態系のメインを占める条鰭類は、まだ、マイナーな存在であった。
この時代には、他にも有機物を外から取り入れるだけの「無気力戦略」をとる腕足類、ウミサソリ、ウミユリ。殻が巻きはじめ、アンモナイトへと進化しつつある頭足類。ものすごいトゲトゲの三葉虫などが繁栄していたという。
デボン紀後期には、五大絶滅の一つが発生。海洋生物ではかなりの分類群が絶滅する。一方で、淡水性など陸上の生物には影響が少なかったようで、謎が多いそうな。
ラストは、脊椎動物の陸上進出。デボン紀の大絶滅「F/F境界絶滅事変」の前にも、足跡の化石が発見されるが、その化石と、事変後の化石とは、関係が見えず、上陸は二度起こったのではないかという。肉鰭類が、上腕骨や尺骨など、陸上生物の体の形を手に入れつつある時代。一方で、本格的な陸上進出はまだ、先といった感じだな。初期の両生類、イクチオステガとか、サンショウウオとどっこいどっこいの陸上性能だったろうし。