土屋健『生物ミステリーPRO:石炭紀・ペルム紀の生物』

石炭紀・ペルム紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))

石炭紀・ペルム紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))

 震災後、しばらく時間が空いて、4冊目。シリーズも進んで、古生代も最後に。
 今までは、海中の生物がメインだったが、ここまで時代が進むと陸上生態系も豊かに。ペルム紀になると、パンゲア全体で、陸上生物が活躍すると。単弓類が覇者となる。かつては「哺乳類型爬虫類」と呼ばれていた単弓類、爬虫類と平行に進化した、完全に別系統の生き物であるというのが、完全に定説化しているのか。脊椎動物の中でも、爬虫類・鳥類と哺乳類の間には深い溝があると。


 石炭紀は、以下の構成。

  1. ウミユリの園
  2. そのとき脊椎動物は……
  3. シカゴに開いた“窓”
  4. 大森林、できる
  5. 昆虫天国

 アメリカ中西部で、保存状態の良いウミユリの化石が多産すると。私は、茎の部分しかゲットしたことないなあ。あと、化石で見ると複雑でおもしろいけど、復元するとちょっとキモイ。
 脊椎動物は一括り。軟骨魚類シーラカンス類が大繁栄。頭に、メスを惹きつけるようらしき、妙な飾りをつけたサメがいろいろと。あとは、ブダイに似た軟骨魚類とか、現在から見ると小さいシーラカンス類とか。一方、陸上では、両生類が陸地に根付く。蛇みたいな手足の退化した両生類や2メートル以上もある巨大な両生類など。この時代の陸上の覇者は、両生類だったのがよく分かる。
 保存状態が非常に良い化石が産出するメゾンクリークについては、一章を割いている。クラゲなどの軟質部しか持たない生物もしっかり保存されている地層。ターリーモンスターやら、正体不明の化石も多産する。コンヴェキシカリスやコンカヴィカリスの珍妙な姿もおもしろいな。「パトレイバー」に出てくる水中用レイバーに、こんなのいなかったっけ。
 陸上では、樹高40メートルにもなる巨大なシダ植物が大森林を形成。そこに、2メートルの巨大ゲジゲジや爬虫類が生息し、昆虫天国になる。最初に翅を獲得したことによって、新たなフロンティアを得る。そこで、大繁栄と。しかし、2メートルのゲジゲジは、たとえ無害でも、なんか無理…
 石炭紀の大森林も、パンゲア大陸が完成し、森林地帯が陸封されると、乾燥化で全滅。さらに、南極点にもおよんだゴンドワナ大陸では、巨大な氷床が発達。石炭紀末の絶滅期と。


 後半は、古生代の最後を飾るペルム紀。爬虫類や単弓類が繁栄。また、ペルム紀末には、地球史上最大の絶滅が発生。90パーセント以上の生物が消える。特に、海洋生態系に大ダメージが入る。構成は以下の通り。

  1. 完成した超大陸
  2. 両生類は頂点をきわめ、爬虫類は拡散を開始する
  3. 単弓類、繁栄する
  4. 史上最大の絶滅事件

エピローグ
 初めて、陸上生物メインとなる。あとは、パンゲアペルム紀大絶滅の地質的事件が大きく取り上げられる。
 この時代にも、相変わらず馬鹿でかい両生類が繁栄。水辺から離れられない両生類の弱点を克服した爬虫類が内陸で繁栄。爬虫類は、羽をつけて滑空能力を得たり、水中に二次的に適応した種類も出てくる。また、数メートル級のパレイアサウルス類も繁栄。
 また、同時期に、哺乳類につながる単弓類も繁栄する。エダフォサウルスやディメトロドンといった有名どころが紹介。エダフォサウルスの帆に、体温調節機能がなかったのではないかという指摘もあるのか。植物食のずんぐりむっくりなコティロリンクスも興味深い。あるいは、南アフリカのカルー盆地で、大量に発見される小型の単弓類ディイクトドン。多数発見されるので、雌雄の区別とかも可能になっているそうな。なんか、プレーリードッグを想像させる生き物だな。
 海洋生態系では、ほぼ全ての生物種か消滅する、史上最大の大絶滅発生。じっとしているだけで栄養を濾し取る腕足類やアンモナイト類は、ほとんど壊滅状態。衰退傾向にあった三葉虫はとどめを刺される。原因に関しては、やはり火山活動が有力だろうなあ。
 らせん状の歯を持つヘリコプリオン研究史も興味深い。CTスキャンで、顎の骨格も発見され、どういう風に収まっていたのか、あるいは、どの系統に属するのかが判明したと。ギンザメの仲間だとか。


 古生代の終焉で、次からは中生代


 文献メモ:
重田康成『アンモナイト学』東海大学出版会、2001
椎野勇太『凹凸形に隠された謎』東海大学出版会、2013
モイトーマス、マイルズ『古生代の魚類』恒星社厚生閣、1981
アーウィン『大絶滅』共立出版、2009