- 作者: 土屋健,群馬県立自然史博物館
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 単行本
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メアリー・アニングとか、マーシュとコープの化石戦争とか、有名人が紹介されているのもいいね。
構成は以下の通り。
- “真の恐竜時代”の始まり
- ドイツに開いた“第一の窓”
- 躍進する爬虫類。そして、カエル
- アジアの恐竜王国
- 伝統的恐竜産地
- 大西洋の向こう側
- 世界で最も有名な化石産地
第1章は総説。「化石婦人」メアリー・アニングの話。生態系の重要部分を占めたべレムナイトの話。そして、おおまかな地理の話。
べレムナイトって、本当にイカみたいなんだな。脚の部分に吸盤ではなく、カギツメがあって、体内に筒状の骨があるのがちがいと。化石は普通に見たことあるけど、自分では持っているかな。
この時代、南のゴンドワナと北の北米・ユーラシア大陸が分離して、テチス海と初期大西洋が形成。ヨーロッパはほとんど海底。北米から中国にかけて、広大な浅海、テチス海が広がると。外洋の大型生物って、やはり、化石として残りにくいのかな。あと、化石になっていても、深海で掘り出せないとかはありそうだけど。
第2章は、ホルツマーデンを中心とするポシドニア頁岩層から産出する化石の話。ジュラ紀前期には、テチス海で、海洋が無酸素化し、大量の生物が死ぬ、「トアルシアン海洋無酸素事変」が発生。ポシドニア頁岩は、その状況で堆積したものと。酸素が少ないと、堆積した岩は黒くなると。じゃ、御船層群の頁岩も、無酸素状態だったのかな。
海洋生物を中心に保存の良い化石が見られて眼福。アンモナイト。軟体部の残ったべレムナイト。魚竜。胎生で出産している状況で化石化したものが発見されている。主食はべレムナイト。一方で、クビナガリュウは産出数が少ないと。魚をメインに追っていて、魚竜と住み分けていた可能性。あとは、首の短い首長竜プリオサウルス類。ワニ、翼竜、ウロコが固そうな魚ダペディウム、流木に引っ付いて繁殖するウミユリ類など。
第3章は恐竜以外の海洋性爬虫類やワニ形類、あとは、カエルらしいカエルの出現。
深海でも目が見えたらしい魚竜。「プレシオサウルス」って、ジュラ紀の生き物だったのだな。あとは、首の短い首長竜、プリオサウルス類。頭も歯もでかくて、大型爬虫類を狩っていたかもしれない。
ワニの類に関しては、現在のワニにつながるワニ形類が登場。足が下に伸びて、違和感バリバリのプロトスクス、現在のワニそっくりのゴニオフォリスなど、ずんぐりとして水かきがついたダコサウルスなど。
第4章はアジアの恐竜産地として、中央アジアのジュンガル盆地を紹介。戦前から調査が行われていた地域なのか。肉食恐竜シンラプトル、竜脚類マメンキサウルス(これ、マメンチサウルスと覚えていたが…)、そして、マメンキサウルスの足跡にはまって命を落とした小型恐竜の化石の話など。75トンの生き物が動いたら、そりゃ、でかい足跡ができるわな。リムサウルスやグアンロンなどが出てきていると。今風に、羽毛恐竜で復元されている。
あとは、羽毛恐竜アンキオルニスの羽毛化石に残された色素の構造を読み取り、白と黒をメインとした色だったとする研究の紹介。翼竜について。翼竜には、ランフォリンクス類とプテラノドン類の新旧二大グループがあり、どちらも出土する。あとは、寄生虫の化石の話とか。
哺乳類の多様性が印象的。ネズミみたいなのばっかりかと思ったら、現在の哺乳類には直接つながらないが、ビーバーみたいなのがいたり、ムササビみたいなのがいたり、かなり多様な適応がなされていた。また、現在の哺乳類につながる真獣類も登場。昔の知識しかないから、このあたりは新鮮だな。
第5章は、古くから研究が進められてきたアメリカ大陸の恐竜たち。スーパーサウルス、アパトサウルス、アロサウルス、ステゴサウルスなどのおなじみの恐竜たちの名前が。広大なモリソン層からの産物。骨髄炎の証拠など。
歯の同位体分析から、カマラサウルスが低地と高地を往復する渡りを行っていた可能性というのがおもしろい。用は歯の化石を輪切りにしたって事だよな。
あと、ステゴサウルス、昔は、これだけでどれだけ防御になったのだろうと思っていたが、首に噛み付かれにくいとか、背中に組み付かれにくいとか、動物の知識が増えると、防御力高いなあと改めて感じる。
第6章はヨーロッパ方面。馬鹿でかい尾びれだけが発見されている、「最大の魚」と言われるリードシクティス。大型肉食恐竜トルボサウルス(これも、他ではタルボサウルスと表記されていたりするな)。島嶼に生息し、小型化した竜脚類エウロパサウルス。象と同じくらいの大きさか。
あと、かつてブラキオサウルスとして紹介されていた恐竜がギラッファティタンとなっていたり。ブラキオサウルスというのは、北米で発見された種とアフリカで発見された種で構成されていた。各地の博物館にある復元骨格は、たいがいアフリカ産を元に作られていた。しかし、分類の見直しで、アフリカのものは別の属とされ、それにともなって復元骨格も看板の付け替えが必要になったと。ブラキオサウルスそのものは消えていないか。ややこしい。
最後は著名化石産地ゾルンホーフェンから産出する化石の紹介。始祖鳥についての記述が多い。現在、始祖鳥の標本は11例。色の研究。あと、空間認識能力はかなり高かったらしいとか。
恐竜に関しては、小型のコンプソナグナトゥスやジュラヴェナトル、スキウルミムスなど。翼竜についても紹介される。
無酸素の海底で、流されてきてから、力尽きるまでの足跡が残った「死の行進」という生痕化石+本体化石が多数発見されている。生々しいな。
あと、浮遊性のウミユリとか。