土屋健『生物ミステリーPRO:白亜紀の生物:上巻』

白亜紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

白亜紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

 白亜紀は、上下巻構成。上巻は、白亜紀前半、ユーラシア大陸の産地メインといったところか。中国の熱河層群、モンゴル、レバノン、北海道、日本産恐竜などの産地が紹介される。中国・モンゴルの化石研究は最近、熱いな。


 構成はこんな感じ。

  1. 羽毛恐竜の“聖地”
  2. 広大な恐竜化石産地「モンゴル」
  3. レバノン」、温かく浅い海の記録
  4. 名脇役”たち
  5. 日本の恐竜たちと、その他の爬虫類
  6. 繁栄を極める爬虫類と、生き残りの動物たち



 最初は中国東北部に分布する熱河層群から産出する化石。火山噴火による熱雲によって、一気に化石化した、保存状態の良い化石が多産する。骨以外の部分も保存され、羽毛恐竜の羽毛が大量に産出している。まさに、羽毛恐竜の研究に不可欠な土地と。
 小型の獣脚類だけではなく、ユティランヌスやディロングのような大型の恐竜にも、羽毛が生えていた。あるいは、全長80センチで小型恐竜を食べていた哺乳類、胎生のトカゲ、現生哺乳類につながる哺乳類などなど。植物の化石の保存状態も良好で、被子植物の出現が跡付けられると。


 第2章はモンゴル。ゴビ砂漠の広い範囲から、恐竜の化石が産出し、アジアの恐竜研究を牽引していると。鎧竜サイカニア、卵泥棒は誤解で自分の卵を温めていたオヴィラプトル、肉食動物の頂点に位置する「アジアの恐竜王」タルボサウルス、腕だけ恐竜から変な恐竜にジョブチェンジしたデイノケイルス、爪の長い草食獣脚類テリジノサウルスなど。


 第3章は、当時テチス海のど真ん中だったレバノンから発掘される化石。魚類いろいろ。おもしろい形をしたお魚さんもいたようだ。あと、タコの化石。ほとんど軟体部だけの生き物の全身がよく保存されたものだ。


 第4章はアンモナイトを中心とする海生無脊椎動物たち。北海道が世界的な産地なのだそうで。異常巻きアンモナイトが普通に繁栄していたことを考えると、アンモナイトって能動的な生き物というより、浮遊しながら、近づいてきたものを食べていたのかね。巻きの変化と進化の話や、アンモナイトの殻に張り付いた寄生生物とか。かなり深海に住んでいたという研究成果も興味深い。
 他に、イカに似た生き物ベレムナイトや嘴部分だけ見つかった巨大イカ・タコ、サンゴを圧倒した厚歯二枚貝、深海で水生爬虫類の骨を分解していた生物など。ベレムナイトが白亜紀の環境を知る手がかりになるのか。なんか、大型水生爬虫類はベレムナイトに頼っていたようだけど、あの殻の大きさは、消化に悪そうだなと。


 第5章は日本産の恐竜や大型爬虫類の紹介。福島県から発見された首長竜フタバスズキリュウ、北陸の手取層群から産出するフクイラプトルやフクイサウルス兵庫県の篠山層群から発見された丹波竜。北海道むかわ町で発見された恐竜など。ある程度まとまった骨格が、複数出てくるとか、90年代には思いもしなかったな。熊本からも、恐竜が出ているが、どうしても、歯とか、骨一個なんだよな。
 あとは、北陸産のトカゲ類、カガナイアスとか、クワジマーラの紹介も。


 最後の6章は、翼竜、最後の魚竜、首長竜、モササウルス、ワニの仲間、最初の蛇、両生類など。