土屋健『生物ミステリーPRO:古第三紀・新第三紀・第四紀の生物:下巻』

 長かった、生物の歴史も、いよいよ最後。新第三紀から第四紀。新第三紀の始まりが、2300万年前だから、最近の話といった感じだな。最後は、現生人類にいたる類人猿とヒト属の展開をまとめている。


 構成は、以下の通り。
第2部 新第三紀

  1. “ほぼ完成”した大陸配置
  2. 哺乳類!!哺乳類!!哺乳類!!!
  3. 孤高の大陸の哺乳類



第3部 第四紀

  1. そして「氷の時代」へ
  2. “タール”に封じられた動物たち
  3. 最後の巨獣たち
  4. 続・孤高の大陸の哺乳類



エピローグ


 第2部は、新第三紀。比較的短い。
 おおよそ、現在の大陸配置が完成。テチス海の跡が、黒海カスピ海辺りなのか。あのあたりの平原を掘削したら、テチス海の化石が出てくると。寒冷化による森林の縮小と平原の拡大。哺乳類以外の生き物たちがまとめて紹介される。
 南米の恐鳥類、もう完全に恐竜だよな。尻尾が短いのが識別点か。割と最近まで、南米の生態系のてっぺん取ってた生き物たち。クチバシに歯のような突起が付いたオステオドントルニスや現生ペンギンと同属のペンギン、カエルは歯が生えたり消えたり。そして、巨大サメ、メガロドンに紙幅が割かれる。最後は日本産のビカリアと泳げないホタテのタカハシホタテの紹介。


 第2章は、哺乳類いろいろ。ものすごい角をもった草食哺乳類たち。キリンの首が長くなる進化の話もおもしろい。早い段階から首が長くなる傾向があった一方で、近縁種のシバテリウムやオカピは「首を短くする」進化をしたと。ムキムキで、長い腕と短い後ろ足を持った馬といった感じのカリコテリウム類。南アメリカに栄えた、北半球の生き物のそっくりさんたち。巨大カピバラこと、体長3メートル、重量11トンのジョセフォアルティガルシア。
 日本を代表する新生代古生物、デスモスチルス類。海のカバといった風情。骨密度から、初期のものはそれほど海洋に適応していなくて、海洋に適応したと思われるデスモスチルスは骨がスカスカになっているとか。
 あとは、アザラシ、アシカ、セイウチといった鰭脚類の海洋適応の話。最初は食肉類のイタチに近い姿の生き物だった。それが、海洋に適応して流線型、手足は鰭に進化していったと。
 パナマ地峡の接続と北米の動物の南米進出の話も興味深い。動物の交流は300万年前に発生するが、もっと前から陸地は接続していた可能性が高いという。パナマ地峡周辺に草原が出現し、草食動物が定着して、やっと、南米大陸に進出する足がかりができたと。


 第3章は新生代を通して、ずっと他の大陸と交流がなかったオーストラリア大陸の哺乳類。有袋類が、大半を占める世界。フクロオオカミやフクロライオンといったほかの大陸の動物に似た生き物。それに、オーストラリア独特の生き物が加わった不思議な世界。肉食カンガルーとか、クマみたいだけど植物食のネオヘロスとか。そして、海を渡ることができたコウモリも繁栄していたと。


 第三部は、いよいよ、最後。現代につながる第四紀。最初は人類の出現で定義づけられていたが、現在は氷河期の存在で定義されていると。第四紀は寒冷な時代だが、氷期と温暖な間氷期が繰り返される時代で、寒冷一辺倒ではなかった。
 日本産化石に関しては、マチカネワニとトウキョウホタテ、ブラウンスイシカゲガイが紹介。マチカネワニは、日本列島が温暖だったのか、自身が寒冷に強かったのか。


 「窓」として紹介されるのは、カリフォルニアの「ランチョ・ラ・ブレア」。タールが自然に染み出した沼にはまって命を落とした動物たちの、保存状態の良い化石が多産する。ミイラ取りがミイラになったらしく、肉食動物が多いと。サーベルタイガーに、アメリカライオンに、ダイアウルフにコヨーテに。植物食動物としてはコロンビアマンモスやアメリカマストドンも出土。一例だけ人骨が犬と一緒に出ているが、これは事故か、埋葬されたのか、議論中だとか。
 あとは、各種哺乳類の紹介。マンモスって、毛がフサフサというイメージだが、全ての種類がそういうわけではないと。ケナガマンモスが特別と。そして、日本列島では、温暖な地域に住むナウマンゾウと寒冷地のマンモスが、気候の変化にともなって行き来していた状況が紹介される。そして、これも日本産のオオツノジカ。
 ヨーロッパでは、ホラアナがつく、ホラアナライオン、ホラアナハイエナ、ホラアナグマなど。そして、南米では超巨大ナマケモノメガテリウムや完全防御のグリプトドン。こういうの、人間にとっては、ねらい目の獲物だったろうなあ。


 第4章は、オーストラリアの第四紀。そういえば、割と遅くまでオーストラリアとくっついていた南極大陸にも、氷床が発達する前は有袋類が幅を利かせていたのだろうな。どういう世界だったのだろう。氷河で削られて、化石の発見は無理そうだけど。
 フクロライオンの仲間ティラコレオ、1936年まで生存していたフクロオオカミ、巨大ウォンバットファスコロヌス・ギガス、巨大草食動物ディプロトドン、巨大カンガルー、3メートルの高さを誇るジャンプできないプロコプトドンなどが紹介される。なんか、本当におもしろい動物だらけだな。


 エピローグは人類の進化。
 霊長類は、哺乳類の中でも最古参のグループ。森林に適応していたのが強みなのかね。そこから、アフリカでサバンナに適応して、二足歩行を獲得したのが人間の仲間と。