愛染猫太郎『塔京ソウルウィザーズ』

 久しぶりに読んだら、程よく内容を忘れていて、新鮮に楽しめた。これまた、オカルトパンクな世界観。割と好きな作品なのだが、続きが出ていないのが残念だなあ。真央の母親はどんな存在なのかとか、ブリュンヒルデの素体となったホムンクルスはなんなのかとか、割と露骨に続き要素が散りばめられていたのだが。
 「ペットセメタリー」という戦闘集団兼家族の再構成の物語ということなのかな。新たな構成員を迎え入れることになって、内部関係の変化を否応なく経験する。強敵との戦いの中で、今まで隠していた思いをさらけ出して、さらに強固な関係を再構築する。
 中盤の人間関係の見え方が、終盤、ガラッと解釈を変えさせられるのが印象的。


 現世と冥界がつながり、人類文明が崩壊したあとの世界。人類は、「ソウル」と「ソウルエネルギー」を利用して、文明の再建を果たしていた。特に、霊気の強い地域は、健康に有害であると当時に、ソウルエネルギーが強く。そこには、魔法国家が建国され、神と接触し、人類を救うための探求が展開されていた。


 主人公、黒乃一将は、動物霊を守護霊としたことで貴族の実家を勘当され、「自由騎士」として犯罪者を捕縛した賞金で学費をまかなう苦学生。多くの動物の使い魔を展開するため、「ペットセメタリー」の異名を持つ。
 自由騎士の仕事の過程で、ほぼ人間のホムンクルス素体「ソフィア=4」を入手。さらに、自身の魂とペットの魂の融合を依頼された少女、椎名真央を、外部からの介入を受けて自らの使い魔にしてしまう。ここから、一将の日常は騒がしいものになっていく。


 ブリュンヒルデの態度、最初は新しい構成員が入ってきたことに嫉妬しているのかと思ったら、真央を戦力化しようとする一将を妨害して、守ろうとしていたのか。そのための、当たりのきつい演技。さらに、ソフィア=4との融合。
 しかし、ブリュンヒルデの決断は、新たな敵を呼び込むことになる。強大な敵、大蛇丸相手の死闘。その中で、心の底にあった後悔も何もかも吐き出して、新たな関係を作り上げる。


 濃厚な世界設定と派手なバトルに満足感が高い。
 あと、ラストの真央にお姉ちゃんと呼ばれてデレデレするヒルダさんが、めちゃくちゃかわいいです。