中川健一『全国2954峠を歩く』

全国2954峠を歩く

全国2954峠を歩く

 タイトルの通りの、全国の峠を制覇したガイド本。10年で、およそ3000カ所を訪れるって、金の時間が必要そうだなあ。あと、最初の方の解説でも触れられているが、江戸時代の歩行者の通路としての峠道は、消えかけているのだな。地理院地図の航空写真を見ても、なかなか見つけにくい。
 移動手段がおもしろい。バイク・乗用車からジムニー&電動マウンテンバイクに。確かに、電動アシストのマウンテンバイクは、坂に弱い自転車の弱点と軽量という長所を活かす選択だなあ。電チャリなら、山登りも怖くない。山では軽トラ最強説があるけど、それまでの移動の快適性と安全性を考えると、ジムニーが妥協点か。ただ、移動手段としての自動車が足枷になっている感はあるな。片方から上って、元来た道を戻るというのは、交通路としての峠を味わい尽くせていないのではないか。
 まあ、この本全体が、データを元に自分で行ったり、地図や歴史を調べたりするとっかかりといった感じがする。ラストの「僕がまわった峠リスト2801」あたりが特に。地理院地図と首っ引きで読んでいたので、意外と読むのに時間がかかった。


 全体の構成は、最初に峠の楽しみ方みたいな解説があって、その後、一つの峠につき見開き2ページが当てられる「厳選峠! 33の物語」、半ページの「絶対行きたい峠120」、そしてリスト形式の「僕がまわった峠リスト2801」とだんだん増えていく。
 とりあえず、地図と首っ引きで読んだのは、最初の33峠くらうかな。今回、図書館から借りてきているので、時間的に、これが限界だった。


 とりあえず、印象に残った峠をいくつか。
 関東平野から甲府盆地に入る街道の峠道が、どれも険しくて驚く。大菩薩峠に、雁坂峠と、完全に登山じゃないの。甲州街道を通って、笹子峠を越えるルートが一番、山道が短くて安全性が高いということか。大菩薩峠経由の青梅街道は、橋立集落から霊峰寺あたりまで、山道が11キロ。秩父往還雁坂峠は、川又から笛吹川岸まで12キロ。これに対して、笹子峠は5キロ弱だから、安全性が全然違うなあ。青梅街道は、明治以降は大菩薩峠を避けた迂回路になっているし、雁坂峠はずっと開かずの国道だったのが、下に長大トンネルを掘ってスキップ。なんともしがたかった道路ということか。
 雁坂峠については、西側の尾根筋を降りていく道がもともとの秩父往還だそうだ。そうすると、黒岩尾根の方から回るルートは、どういう素性の道なのだろうか。ネットで検索しても、あんまり情報が出てこない。山梨あたりの郷土資料を熊本で探すのはコストがかかるしなあ。
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 膨張性地山(スメクサイト岩盤ストレーキング)なる現象で、比較的短期間で放棄された宇津トンネルが印象的なのが、宇津峠。維持できなくて、新トンネル掘って放棄というのがすごいなあ。
 このトンネルに潜っている廃道探索者がいるけど、いつ崩れるか分からないと言う点で、危険度は高そうだなあ。
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 あとは、活火山の間をトンネルを通して途中爆発事故を起こした安房峠、愛知県豊田市と長野県飯田市を結ぶ街道の難所伊勢神峠、京都の北郊の京見峠などが印象的。
 安房峠の水蒸気爆発と放棄された取り付け道路の跡、なかなか見つけられなかったのだが、ヘアピンカーブの一番下にあるのだな。最初は、かなり下にトンネルの出口を作る予定が、爆発を受けて、斜面の中腹付近に出口を変更。見上げた写真が掲載されていたから、上の方かと思ったら、対岸の道路から見上げて撮ったのね。内部には、元のルートの跡があるのか。
 しかし、活火山の山体を抜くトンネルとか、危ないなあ。
 長野県側の梓川の道路も、新鮮な崩落地がいくつもあって、なかなかに危険そうというか、維持が大変そうな場所だ。
ja.wikipedia.org
67care.jp
chigaku.ed.gifu-u.ac.jp
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 熊本県内の峠は、「33」中に津奈木太郎峠、「120」に清水峠、日の尾峠、阿保峠、子別峠、新道峠で、計六カ所。うち、日の尾峠と阿保峠は、四輪通行不可の道。砂川の上流域と氷川の上流域を結ぶ新道峠が興味深いな。あと、阿蘇外輪山の南側にいくつもある峠は、阿蘇氏の歴史と関連して興味がある。とはいえ、機動力ないなあ。
 そういえば、末尾のリスト、俵山峠は、山鹿ではなく、阿蘇の範疇だと思うのだが。微妙に校正が甘い?



 峠には、高山市が作った峠の資料館「野麦峠の館」がある。失われていく峠をもう一度見直そうと作られた唯一の峠の資料館だ。井出孫六の『日本百名峠』に取り上げられた峠をすべて展示しているほか、郷土の資料も公開されている。また、年1回「野麦峠の旧道を歩く会」を催しいている。峠をやるものなら、この資料館は見るに値するといえるだろう。p.59

 へえ。日本唯一の峠専門資料館。