伊都工平『モノケロスの魔杖は穿つ 2』

 4巻構成で、起承転結がはっきりした作品の「承」の部分。王国の「騎士」である長川律に焦点を当てたエピソード。
 いや、話のギミックが非常に好き。
 とりあえず、「本州パンチ」と「忍者はノーカン」が印象に残るw


 一巻で魔術の世界に巻き込まれ、成り行きで「王国」を成立させたヒロたち。荏原の新王と呼ばれるようになったヒロは、異物としてムサシの国から付け狙われるようになる。ついでに、もともと日本を構成していた小国からも、たくさんの監視の人間が送り込まれ、ヒロたちの学校はてんやわんやに。
 そんななか、魔術師たちの隠れ里に買い出しに出かけたヒロと麻奈は、さらに隠されていた「道場街」に紛れ込んでしまう。魔術師たちさえからも隠されていた、「国際連合」、ドラゴンたちの隠れ里は、しかし、ムサシの国がヒロたちの王国を排除し、神器カドゥケウスの杖が消失したときに起る魔術汚染を防ぐための魔除けの実験によって結界を剥がされてしまった。
 隠れ里は、そこに突き立てられていた神剣アレイオンを秘匿するためのものだった。それを探していた、日本を破壊した元凶ソキエタス・スファエラの使者トリンキュローは、捜索のために操っていた「アルゴス」をけしかけ、神剣を引き渡すように強要することを目論む。


 両者の対立状態の中、ヒロはドラゴン側について、事態に介入することを決断する。
 動けなくなっていた日本の土地神「秋津洲」と交渉、新たな同盟を結び、アルゴスと戦う手段を提供する。そして、カドゥケウスの杖の力を使って、アルゴスの最大の武器である幽体化による攻撃の回避を封じる。
 一方、律は、ヒロの王国の機会主義という危うさを見抜き、アレイオンを抜き、内部から正義という方針を確立しようとする。
 律の過去、東京と日本が消滅した日、弟を見捨てた過去、そして、その日に遭った男の「目」から欲求を失っていた律の異常さ。竜に対する憎しみ。そして、その和解。
 最終的にアルゴスをアレイオンの力で倒し、東京の危機を救い、現状維持に成功するヒロたちの王国。薄氷の上の王国の姿。


 いや、竜の隠れ里、神剣を抜くための道場街の素っ頓狂さがいいなあ。