伊都工平『モノケロスの魔杖は穿つ 4』

 最終巻にして、大団円。
 とりあえず、「勇者参上!」のセリフが好き。


 立木ヒロ=長川史郎が12年かけて成したソキエタス・スファエラ討伐の陰謀。しかし、それは見抜かれていた。迷宮の海の神によって、本拠スノークリスタルを浮遊させていた「さまよえるオランダ人」の船を解放。浮遊能力を奪う。しかし、ソキエタス・スファエラは異世界アッシャーへ続く「秘匿通路」を開き、スノークリスタルを待避。一方、「鉄串」によって封印されていた氷界によって、殺到してきたドラゴンたちを氷漬けにしてしまう。
 ソキエタス・スファエラの指導者「木星」の正体がラスボス過ぎる。「最も古き竜」こと、地球そのもの。「魔法物質」の塊というのが。まさに、母なる地球からの自立。母殺しの物語か。


 ヒロの死亡とスノークリスタル攻略失敗から一月後。人類もドラゴンたちを救出するために多国籍軍を組織、戻ってきたスノークリスタルに攻撃をしかける。大量のキマイラたちが乱舞する混戦の中、幽界でドラゴンに治療を受けて命を拾ったヒロ、ヒロの生存を掴んだ麻奈とセシリア、幻覚魔法で遠ざけられていた律といった王国の面々が集まり、さらに喜連川、四方、風祭出海も王国に加わり、カドゥケウスも完全体にパワーアップした状態でラスボスに挑む。
 戦術装束で可変モビルスーツみたいになってるヒロがなんとも。


 最終的には麻奈考案の核分裂反応みたいな呪文で、アルマ・マーテルの内部を荒らして、その対応に忙殺させ、人類から手を引かせる形で勝利。しかし、アルマ・マーテルを核にしていた魔法体系はいったん破綻してしまい、新たに各地の神々と魔法体系の再構築を強いられることになる。
 麻奈の魔法を抑えるのに36億年か。それって、太陽が膨脹して地球が飲み込まれるまで10億年くらいの時期だな。かなり、地球が生物の生存に不都合になっていそうだが。いや、この作品世界では、関係ないのか。
 あと、アルマ・マーテルの常に「人」を作り出してしまうのは、手癖とは言え…


 なんとなく収まりつつ、なかなかうまくいかない感じのエピローグが好き。