茉雪ゆえ『指輪の選んだ婚約者』

 刺繍フリークの令嬢と「氷の貴公子」の恋。
 フェリクスが怜悧な美貌と裏腹に、口下手で人見知りというのがおもしろい。で、縁談やら夜会での女性の紹介に辟易したフェリクスは、酔っ払って、由緒ある指輪が当たった人物を嫁にすると言って、放り投げる。これが、占術となって、選ばれたのが、刺繍を全てに優先する辺境伯令嬢アウローラだった。
 派閥的にも問題なく、性格的に相性の良い二人は徐々に親密になっていって。
 女傑な母と姉に押さえつけられて、女難の相バリバリのフェリクス。あげくに口下手で人見知り。ガンガン寄ってくる令嬢が苦手と、およそ恋愛向きではない人物。それに対して、かなり刺繍優先で、ほどほどの距離感を保つアウローラは居心地が良い相手で。ついでに、辺境の荒事にもそれなりに理解がある令嬢というのもポイント高いのか。
 というか、かなりコミュ障なキャラであるアウローラに社交面で補助を受けるフェリクスのコミュ障ぶりよ。


 刺繍に魔力が込められるということで王太子からの呼び出しを受けたり、フェリクスのライバルから敵対派閥の夜会に招待されて準備に追いまくられたり。ちょくちょくイベントがありつつ、仲を深めていく二人。
 そもそも、ポルタ家が避暑に出て、互いに2週間会えなくて寂しいと思ってる時点で、もう相思相愛だよなあ。で、本気になったフェリクスがデートを始め、攻勢をはじめて戸惑うアウローラ。


 問題なくくっつくかと思ったら、刺繍に魔力を込められる「原始の魔女」の復活であることが分かり、魔術研究機関「塔」で刺繍に専念してくれと誘われる。フェリクスに出会う前だったら二つ返事で受けたであろうお誘い。しかし、フェリクスと長い時間離れることになると考えると、踏み切れない。ここにきて、グルグルと混迷する展開になるとは思わなかった。
 最終的に兄に諭されて、フェリクスを優先することを決意し、それを伝えようとするがすれ違いが続いて、またもや指輪に引き合わされる。


 ラストの夜会で、注目を受けながらのほほんと周りの刺繍を眺めてるアウローラさんが、らしいなあ。そして、ラブラブな二人のラストシーンが印象的。