日向雪『紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。:聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません。』

 とりあえず、ロレッタさんの天然暴走ぶりが印象深い。聖女が、婚約破棄されて、職安って。
 というか、関係者の反応が鈍いような気がする。3日あったら、とりあえず王宮から連絡が来たり、伯父侯爵が引き取りに来たりするんじゃなかろうか。まあ、そこで職安に行かないと物語が始まらないわけだけど。


 第二王子に卒業パーティで婚約破棄されてヤケクソになった第二聖女のロレッタ。職業安定所で、炎のエース侯爵家の御曹司ルーシュと遭遇。ほとんど、保護という形でメイドとして雇われる。
 六大侯爵家の一つ水の侯爵の姪といえど、田舎の貧乏伯爵家で育ち、学校では勉強漬けとなると、自分のポジションが分かってない天然の娘ができるのね。寒色系の外見でクールに見えるけど、実際は天然というギャップ。
 魔法を高速展開したり、ほいほいと魔道具を作り上げて、紅茶を吹き出されたり、カップを取り落とされたりするロレッタさん。


 王太子シリルと、紅の魔術師ルーシュ、第二聖女ロレッタの三人の掛け合いが楽しい作品だけど、ストーリーで言うと、ほとんど進んでない感があるなあ。ロレッタがエース家のメイドになって、シリルがお泊まりに来て、第二王子が廃嫡されて、正式な婚約破棄の手続きが行われた。
 そして、第一聖女が本当にロレッタを超える能力があるのか、「聖女等級」判定の公正さに対する疑惑。あるいは、魔法学校の聖女科がほとんど自習状態であったり。教会の腐敗がそこはかとなく見えてきたり。


 「真実の愛」カップルの酷さがなんとも。


 番外編は、ロレッタの父親とその兄、現水の侯爵の子供時代のエピソードと次巻で出てくるはずのアリスターとクロマルのエピソード。クロマル、猫だったんだ…