『朝日新聞』「世界発2014」から(その2)

[切り抜き]「世界発2014:アフガン麻薬 密輸絶て:『中継地』タジク 捜査強化」『朝日新聞』2014/5/9

 隣に失敗国家があると、自分の国も荒れるのだな。
 アフガンの麻薬の中継で、タジクの反政府組織も資金を得ている。タジキスタントルクメニスタンからロシア経由でヨーロッパに流れる北ルート、イラン・トルコを通るバルカンルート、パキスタン経由の南西ルートなどで、世界各地に流れていく。


 対策もダイナミックだなあ。密輸ルートに橋をかけて、監視強化とか。
 ロシアも消費地なのか。

[切り抜き]「世界発2014:ロシアの主翼 視界不良:世界最大の量産貨物機『ルスラン』」『朝日新聞』2014/9/9

 ウクライナ危機で、アントノフ社製の大型輸送機An-124ルスランのロシア国内でのサポートが難しくなりつつある、と。結局、この問題、どうなったんだろう。アントノフ機は、ロシアにたくさんあるはずだけど。ロシア国内のルスランは、エンジン取り替えたとかいう話がウィキペディアに出てたけど。


 ロシア側は、設計や安全に関する情報がウクライナ側にあるので、安全運行や整備に支障を来たしている。自力補修では安全性に問題が残るし、欧米の空域を飛ばすための保証は、アントノフからしか得られない。ここらあたり、どう切り抜けてるんだろう。日本にも、2018年時点でも元気に飛来しているようだけど。


 アントノフ社側も、最大の顧客を失ってしまう危険がある。中国で、ムリヤのライセンス生産って話も、こういうアントノフの生き残り策なんだろうなあ。西側で商売しようにも、部品や設計の規格や認証が難しそうだし。MRJの難航なんかを見ていると、ずいぶん、閉じたシステムなんだなあと。
 現在もルスランが飛んでいるってことは、サポートは提供されているってことなのかな。


 ソ連が分裂して、互いに争うようになったら、サプライチェーンが寸断、と。艦船用のガスタービンが供給されなくて、国産のものに変更とか、あったな。そもそも、ロシアのそのあたりの生産基盤はどの程度のものなのだろうか。

[切り抜き]「世界発2014:中州の子に職場を:日本人料理人 ハノイで開店」『朝日新聞』2014/11/21

 ベトナムハノイの水上スラムの子供たちの就職訓練の話。
 ベトナム戦争後の混乱期に、孤児になった人々が住み着いて、出現した、川の中州のスラム街。共産主義国家でも、こういう状況なのか。あからさまな就職差別にあっているスラムの子供たちを雇うべく、料理人の増田悠さんが、料理店を開店。積極的に雇っているという話。
 都市に流れ込んだ農村貧困層が、結局、子供を学校に通わせられない。で、全体の8パーセントにあたる131万人が学校に通っていない。なかなかの惨状だな。そういうのが、国力の低下に繋がるのだがなあ。

[切り抜き][環境]「世界発2014:880万人の水がめ 窮地:ブラジル南東部 記録的大干ばつ」『朝日新聞』2014/11/25

 最大の都市サンパウロを含むブラジル南東部が、未曾有の旱魃に見舞われているという話。サンパウロに水を供給するカンタレイラ複合貯水池が干上がりかけている。これは2014年の記事だが、なんか2018年も大干ばつだそうで。大丈夫なのかね。


 水道管からの水漏れや農業の節水など、インフラの問題。あるいは、アマゾン川流域の熱帯雨林の伐採が、水蒸気の供給を減らしているという指摘など。つまり、ブラジルがアレという話か。
 日本も、あんまり他人事じゃないような気がするが。


ブラジルの干ばつ、迫る水不足の危機 ナショナルジオグラフィック日本版サイト ほぼ同内容。
国内各地で雨不足の影響 13~17年に国内市の約半数で=IBGE ? サンパウロ新聞

[切り抜き]「世界発2014:中東 キリスト教徒苦悩:『イスラム国』迫害 故郷追われ」『朝日新聞』2014/12/4

 ある意味、近代のヨーロッパで行われてきたことが、行われつつある感じだけど。
 イラクの北部ってのは、東方キリスト教やヤジディ教徒なんかの古代からの少数宗教の避難所だったんだけどね。そもそも、在来キリスト教徒への迫害の激化は、イスラム圏全域の問題でもある。エジプトのコプト教徒も、教会が襲撃を受けたり、殺害されたり、テロの対象になっているし。「キリスト教徒が中東から追われようとしている」という法王の危機感は、正しいよなあ。

[切り抜き][環境]「世界発2014:激減コアラ 救えるか:豪州 1千万頭→5万~10万頭」『朝日新聞』2014/12/10

 立派に絶滅危惧種のような…
 かつては毛皮目当ての乱獲。今は、鉱山や住宅地などへの森林の破壊。そもそも、オーストラリアって乾燥地なのに、そんなに植生を剥ぎ取って大丈夫なのかね。食糧のユーカリだけではなく、暑さに対処するための木も重要なんだとか。あとは、都市部では環境ストレスで免疫力が低下、クラミジア感染症が広がっているとか。
 遺伝的なリスク分散のために、域外の動物園に送り出すこと自体は必要なことのように思えるが。ちゃんと、全国レベルで管理できるかが問題。というか、コアラって、日本で飼育するとめちゃくちゃ高くつくんじゃなかったっけ。


 つーか、オーストラリア人って、クジラだのイルカだのの保護には熱心だけど、カンガルーとかコアラには、ものすごく適当だなあ。


コアラ - Wikipedia

[切り抜き]「世界発2014:中国 加速する高齢化:60歳以上2億人突破」『朝日新聞』2014/12/24

 とりあえず、30年後くらいには、中国は外征どころではなくなるはずなのだが…
 空虚な「中国夢」とか言ってないで、社会保障政策に投資すべきなんじゃないのかねえ。中国共産党にとっては、下々の国民が悲惨なことになっても、大して気にならないのかもしれないが。


 日本もそうだけど、社会の不安定化で、複数の子供を作るのは難しい状況。一人っ子政策をやめたからといって、少子化が何とかなるものではないわな。労働力人口の減少ということで、今後、ガンガン外国人労働力を輸入する国になるかも。

『朝日新聞』「世界発2014」から(その1)

[日記]

 どっかで風邪をもらったか、のどが痛い。熱はないが、ちょっとだるい。

[切り抜き]「世界発2014:豪先住民の食材 脚光」『朝日新聞』2014/2/7

 アボリジニーが採集して、食べてきた食材が「ブッシュフード」として、注目を浴びているという話。ギルモア夫妻が栽培を始め、カリスマシェフがテレビで使うようになって、普及しつつあるそうな。
 ギルモア夫妻の栽培の試み、それをアボリジニーたちに教えて、農家としての自立支援の話がいいねえ。


 パリラ、マニェルー、シーパセリ、カルカラ、レモンアスペン、カカドゥ・プラムなどなど。つーか、今まで栽培化されていなかったのは、アボリジニーが農耕民じゃなかったからなのかね。


ブッシュ・タッカー - Wikipedia

[切り抜き]「世界発2014:『風立ちぬ」伊の飛行機設計士の孫:『宮崎監督、分かってくれた』」『朝日新聞』2014/3/5

 著名な航空機設計者であるジャンニ・カプローニの孫へのインタビュー。宮崎駿との交流とか。
 戦争協力者として、終戦直後に工場を破壊されたり、50年代には飛行機部門が倒産。57年に死去。なかなか厳しい最後だな。グループ会社の最後は、カプロニ・ヴィッゾーラ社で、バイクを製造していたけどアグスタ社に吸収されたと、Wikipediaにある。1983年まで生き残っていたというのは、すごいな。
 そういえば、このお孫さんのイタロ・カプローニ氏、どういう仕事をしているのだろうか。

[切り抜き]「世界発2014:キリシタンに脚光:バチカンで法王絶賛『日本に学ぼう』」『朝日新聞』2014/3/26

 たしかに、孤立した状況でよく残ってきたよなあ。フランシスコ法王のキリシタン賞賛には、なんか政治的意図がありそうな感じだけど。
 昭和初頭にやって来たマレガ神父が収集した史料1万点が、バチカンに収蔵されているのが発見。それの研究プロジェクトが、フランシスコ法王の肝いりで、推進されていると。


 古い聖歌がそのまま保存されていたり。暗唱していたってのがすごいな。

[切り抜き]「世界発2014:カート、イエメン侵す」『朝日新聞』2014/4/1

 社会不安でカートの消費量が増大しているという話。これの次の年に内戦が発生したわけだけど、カート栽培は、どうなったんだろう。手間要らずみたいだから、生き残っていそうだな。
 カートの需要増大で、作物の転換が進んでいるが、それは地下水の大量消費に繋がっている。水不足を悪化させている状況か。
 つーか、内戦前の時点で、人口の4割1千万人が食糧不足で、慢性的栄養不良の児童は58%とアフガニスタンに次ぐ高さだったとのこと。それって、内戦の前の時点で破綻状態だったってことか。


 なんか、カートの効き目は非常に弱いそうだが、逆に言えば、それに頼るくらい食糧供給などが貧弱ってことなのかね。


カート、違法薬物と環境・資源問題 ナショナルジオグラフィック日本版サイト

[切り抜き]「世界発2014:ビールか シェールか 独、苦い選択:ウクライナ問題で議論再燃」『朝日新聞』2014/4/17

 うーん、結局、シェールオイルは、コストが高すぎて、ダメっぽいが。


 ビール純粋令によって、自社の井戸の水質が鍵となっているビール醸造業界が、シェールガス開発を阻んできた。しかし、ウクライナ危機で、ロシアへのエネルギー供給の依存が問題になったため、自国内でのシェールガス開発の動きも強まっている、と。
 アメリカやロシアくらい広い国ならともかく、ドイツや日本くらいの大きさの国だと、シェールオイル開発は無理があるよなあ。地下水の汚染の問題もあるし。日本だと、地震を誘発しかねない。

 一方、開発会社にはチャンスだ。石油メジャーの関係者は、水圧破砕による採掘について「ドイツで(通常の天然ガス採掘のために)長年用いられてきた技術。300個所以上で行われたが、問題はなかった」と述べ、シェールガス開発も問題ないとしている。

 ほんまかいな。

[切り抜き]「世界発2014:飛べ『天空のレタス』:長野の法人、ベトナムで農法伝授」『朝日新聞』2014/4/24

 ベトナム中部の高地ダラットで、川上村式のレタス栽培を試みている話。ベトナムでも、涼しいところは涼しいのだな。冷蔵輸送にコストがかかるので、結局、ホーチミン市での価格は、現地レタスの3-4倍、日本並みの価格になる。このあたり、輸送インフラが改善されれば、下がってくるコストなのかね。
 気候風土の違いは、相応に、あるようだ。

[切り抜き]「世界発2014:南ア、人種の壁いまも:民主化から20年」『朝日新聞』2014/4/29

 いまだに、白人が高収入を享受しているわけか。教育の差は、埋めがたいのだろうな。数世代にわたって教育や職業訓練から遠ざけられてきた人々は、そのまま未熟練労働者となってしまう。「スタート地点が違う」か。所得格差が6倍。
 土地の再分配は、必要だろうなあ。


 アフリカーナーが作っている白人だけの町「オラニア」が気持ち悪いなあ。油断すると、そこがゲットーになりかねない危険もあると思うのだがねえ。「一つの文化、価値観で育ったほうがよい」って…


 白人主導の最大野党民主同盟が、「白人政党」を脱皮できるかの試金石がムムシ・マイマネ党副全国委員長ということなのかね。
 そして、ANCの腐敗。結局、政府運営の技術を持たない人々が急に政権をとっても、満足に運用できないということなのだろうか。


 貧困地区の「マンデラは白人に特権を残し、我々を白人に売ったんだ」というセリフが怖いなあ。

『朝日新聞』「世界発2013」から

[切り抜き][感染症]「世界発2013:薬効かないマラリア 脅威:改革進むミャンマーの国境付近」『朝日新聞』2013/4/25

 本当に軍事政権とか録でもないな。ミャンマーは、長年、公衆衛生が等閑視されてきた。そこに、多剤耐性マラリアが入ったら、一気に拡散する可能性が高い、と。この記事から5年たって、めちゃくちゃ悲惨なことになっているという感じではないが…


 東南アジアの半島部で、標準的な治療法であるアルテミシニン併用療法に耐性を持ったマラリアが、独立に出現して、広がっている。
 国境を行き来する人が多いため、水際対策が重要、と。検査キットや治療薬の供給や、管理配布の研修を開くなど、日本を含む国際社会の支援など。


アジアの薬剤耐性マラリアと日本 FGFJ ? グローバルファンド日本委員会

[切り抜き]「世界発2013:銃なき米領サモア:島独自のルールで規制:警官も丸腰・水際で取り締まり」『朝日新聞』2013/5/21

 銃を徹底的に拒否する米領サモア。徹底的に銃を排除して、公的に認められているのは、野豚駆除用のライフルのみ。警官も丸腰。国境で、徹底的に銃を取り締まる。一方で、密輸による持ち込みも増えている状況。警官が銃を所持するべきだという議論も出ている。
 前知事の言葉がもっともだよなあ。もっとも、スイスなんかも、家庭に軍用銃が置かれているわけで、アメリカ社会そのものがアレという感じも…

 言葉の端々に、3億丁の銃がはんらんする米国への批判が混じる。「銃所持は憲法で認められた権利だなんて身の毛がよだつ。家に軍用銃があるなんて、まともじゃないだろう」



 「米国の論理」に押しつぶされない抵抗か。経済的徴兵制による、イラク従軍。人口10万人あたりの戦死率が8.6人と飛びぬけて高いというのが、植民地という感じだなあ。

[切り抜き]「世界発2013:旧支配者の教会 守れ:セルビアから独立 コソボの挑戦」『朝日新聞』2013/6/13

 「旧支配者」と聞くと、宇宙的なものを連想してしまう、特定クラスタ


 コソボでは、セルビア正教会の宗教施設が危険に晒されている。世界遺産デチャニ修道院も、何度も手投げ弾を投げ込まれている、と。
 まあ、実際にジェノサイド状態だったわけだからなあ。教会が、セルビア人の象徴として、目の敵にされるのは分からなくもない。しかし、セルビア人と同じことを繰り返すだけなら、セルビア人と同じ運命をたどるしかない。
 国際的な承認拡大のために、セルビア人の保護に動き出しているのが現状。教会周辺を、教会の同意なしに開発できないようにする保護区の設置。しかし、それに対する地元住民の反発。
 なんかなあ…

[切り抜き]「世界発2013:ミャンマー難民 帰るか残るか:タイからの帰還 政権、突然の提案」『朝日新聞』2013/7/11

 民政移管で、カレン人系の難民に対する圧力が高まっているという話。5年たって、ロヒンギャ危機も発生した後では、どうなっているだろうか。
 タイにある難民キャンプの支援が先細り状態というが。拠出額の減少。さらに、新規の難民登録の停止などなど。
 若い世代だと、「ミャンマー」が知らない国状態。アメリカへ行きたいと希望する人が多い。結局、少数民族に経済的恩恵は届かない、と。

[切り抜き]「世界発2013:居留地に光と影:シェール革命の震源地米ノースダコタ:インディアン、収益を期待」『朝日新聞』2013/7/9

 シェール革命に沸くノースダコタのフォートバートホールド居留地。苦難の生活を続けてきたマンダン、ヒダツァ、アリカラの「3提携部族」の人々は、シェールオイル採掘からの収益を、自立の糧として期待している、と。
 一方で、部族の意思決定の不透明さとか、水資源の汚染、渋滞などの住環境の劣化などの問題が出てきている、と。たしかに、石油関係の仕事をしている人間が、許認可権を握るのは利益相反だよなあ。


 シェールオイルバブルがしぼんだ現在では、どうなっているのだろうか。
 あまり埋蔵量が豊富でないシェールオイルで、恒久的に環境を汚染してしまうのが、賢いことかどうか。ブームが去ったあとに、不毛の地に取り残される可能性もありうるわけだしな。

[切り抜き]「世界発2013:エジプト文化財 危機:博物館新設、資金難・進まぬ修復・略奪」『朝日新聞』2013/10/22

 ムバラク政権の崩壊、さらに、2013年のクーデターとその後の治安悪化で、観光収入が激減。保存・修復の拠点となる大エジプト博物館の建設資金が不足しがちの状況にあるという話。結局、日本が、ずいぶん資金を注ぎ込んだ形の模様。なんか、ずるずるとオープン時期が遅れているようだが、頓挫せずに建物はできて、文化財の運び込みが行われているようだ。


 観光産業の不調は、かなり、経済的にきついし、文化財の保存にも悪影響を与えていそうだなあ。毎年、定期的にテロがあるから、安全といった感じはないよなあ。
 国立博物館の略奪というのは、2013年以降起きていないようだが。
 この状況で、遺産の返還とかは、難しそう。

新見志郎『軍艦と砲塔:砲煙の陰に秘められた高度な機能と流麗なスタイル』

 読み終わってから、少々時間がたっているので、まとめにくい。
 巨砲、水雷兵器、装甲と来て、一連の著作の中ではちょっと地味な感じの砲塔のお話。ついでに、取り上げている時代も、少し、後の時代。第一次世界大戦あたりが記述の中心になっている。
 何十トンもある砲身を自由に動かし、さらにそれを何百トンもの装甲で防護し、相応の発射速度を与える給弾装置、人力で扱える重さを超えたでかい砲弾のための装填装置となると、かなり大掛かりなシステムになる。俯仰装置、旋回装置、装填装置、給弾経路などが、それも、戦闘時の予備装置なども含めて、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたのが砲塔。三次元構造は、紹介しきれないので、簡略な構造を紹介。


 下側に強固な装甲を施したバーベットを置き、その上にむき出しで砲を設置する露砲塔。近距離で、ほぼ水平射撃の19世紀終盤あたりまでは、これで十分に防御力があった。弾薬や旋回装置などは防御されていて、砲身は投影面積が少なく、砲員の損害は数で吸収するという発想。定遠鎮遠が代表事例。
 同時代的に、装甲で囲った砲塔も存在。初の装甲艦同士の戦闘である、ハンプトンローズ海戦。南軍のヴァージニアと北軍のモニターの戦いが小説風味に紹介されるが、発射速度も低いし、そもそもの命中精度がめちゃくちゃ低いという。そういう状況では、投影面積の小さいモニターの優位というのが、大きいのだな。ヴァージニアが劣勢だった。


 それから後は、19世紀末以降の国ごとの展開、第一次世界大戦軍縮条約後の砲塔へと進む。イギリスの歴史的展開がおもしろいな。囲砲塔から、いったん、上部の砲室がなくなる高架砲塔へ展開。改めて、装甲された砲室が出現、弩級戦艦以降に繋がる。20世紀初頭あたりに、猛烈に試行錯誤が行われる。給弾装置の改善、装填装置の仰角の自由化などなど。爆発の危険性が高い装薬をどう防御するかが考えどころ。
 ドイツ、アメリカ、フランス、イタリア、ロシア、日本などの砲塔の歴史。アメリカがおもしろいな。二重砲塔を作ってみたり、早くから自由仰角装填にしていたり。


 第一次世界大戦弩級戦艦の黄金時代。ドッガーバンク海戦ジュットランド海戦で、砲塔がどのようなダメージを受けたかを紹介。
 ドッガーバンク海戦で、砲弾に直撃を受けて、大爆発を起こしたドイツ側が、装薬の爆発対策を導入。それが、次のジュットランド海戦での、ドイツ艦爆沈を防いだ。ザイドリッツは、本当に、よくもまあ轟沈しなかったものだ。
 続いては、有名なジュットランド海戦。イギリスの巡洋戦艦が複数、爆沈している。というか、両軍とも、巡洋戦艦はボッコボコに撃たれているな。そして、戦艦級の砲弾が命中すると、貫通しなくても内部に被害が出る。


 最後は、ジュットランド海戦の戦訓を組み込んだ、軍縮条約後の戦艦砲塔。自由仰角装填をあきらめた戦艦が多いのが、おもしろいな。機構の複雑化と発射の自由度のトレードオフ。そして、最後はデ・モイン級重巡の全自動装填砲塔。


 そういえば、戦艦の砲塔内部配置の自由度を上げた、チェーンラマー。結局、どういう風に組み合わさって、棒になるのか、実物の写真が見たいところ。

「世界発2014:ナイルパーチ激減:アフリカ・ビクトリア湖の巨大魚」『朝日新聞』2014/10/28

 タンザニアウガンダケニアにまたがる湖、ヴィクトリア湖で、輸出用の巨大魚ナイルパーチの漁獲量が激減しているという話。もともと、多様な固有種が存在する湖に、商業用に大型肉食魚ナイルパーチを放流。結果として、400種いた固有種は半減。ヴィクトリア湖の悲劇とか、ダーウィンの悪夢とか言われる惨状に。
 固有種は藻やプランクトンを食べていたが、その減少によって、藻やプランクトンが異常繁殖。湖全体が酸欠になりつつある。
 さらに、その商業用に導入されたナイルパーチが、生存環境の悪化と乱獲で激減中。3-5割減少というは、破滅的な状況。商業的開発の悪い見本そのものだな。小型の魚ばかりになって、それを根こそぎ奪い合う状況。100キロの大物を揚げられれば、3ヶ月暮らしていけるそうで、一攫千金を狙った人口流入。それにともなう、資源への過剰圧力と水質汚染。さらに、切り身などに加工する水産工場も、稼働率が激減。地域経済そのものが、立ち行かなくなりつつある。
 ナイルパーチ白身魚の切り身といった形で、日本に入っているそうだ。アオコが繁茂しまくる水質が汚濁された湖の肉食魚とか、食べて大丈夫なのかねえ…


 この記事を書いた三浦英之記者のレポート→ビクトリア湖の汚染とナイルパーチ漁獲量の激減 - Togetter
 上陸が許可されなかったミギンゴ島の写真多数。不毛の島に突然出現したナイルパーチ千軒。迷路状の空間。
 あとは、他の土地のレポートなど。ウガンダケニアの水産当局の、汚染データの開示拒否が怖いな。商品の汚染を分析したら、恐ろしいことになりそう。というか、こんな湖の魚は食べたくない…
 2013年に、ヴィクトリア湖から輸入されたナイルパーチは1800トン。どういう流通経路で、消費者の口に入ってるんだか。
 在来種の養殖・再導入でもするしかないんじゃ。


ヴィクトリア湖 - Wikipedia 植民地政府の役人の仕業か…
世界最悪の外来種問題 『ビクトリア湖の悲劇』 - 外来魚ひとりがたり
ダーウィンの悪夢 Story
日々の雑感 87:映画『ダーウィンの悪夢』が問いかけるもの(1):土井敏邦 Webコラム
アフリカ3大湖~ビクトリア湖の悲劇 ( 観賞魚、水草 ) - サボタニとイタグレと何とか - Yahoo!ブログ
美味しい魚の不都合な真実。 マラウイ湖の魚は大洋の夢を見るか(矢倉隊員は帰国しました。) JICAボランティアの世界日記