- 作者: 前間孝則
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/04
- メディア: 単行本
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敗戦直前の呉工廠と主要人物の動向から始まり、戦後の呉の様子、NBCの進出まで、波乱万丈の展開で非常に面白く読めた。
しかしながら、視点が呉と真藤氏に固定されているため、他の造船各社の状況や運輸省の技術行政など全体を見渡した状況が見えにくい。読んでいるうちに、三菱などが悪役、旧呉工廠が善玉といった色分けになってしまいそうなのが怖い。当時の呉に関わっていた当事者にとってはそういう風に見えたのかもしれないが。
あと、すこし驚いたのが本書でのリバティ・シップの評価。NHKスペシャルで昔あった「ドキュメント太平洋戦争」の影響で大量生産ながらなかなか性能のいい船と理解していたのだが、本書では粗悪品扱いで、その落差が大きい。現在も使用可能な状態で残されたリバティ・シップもあるのだから、本書の溶接技術の部分で触れられたように、品質に落差が大きく、ベテランの職工が作った船はそれなりに使えたのだろう。
第2次世界大戦におけるアメリカ工業の標準化はすさまじい。ドイツもフランスやイギリスと比べると合理化が進んでいたのだろうが、海のむこうには合理化の化け物がいたということか。それに比べると日本はイギリスやフランスのような牧歌的な工業だったのだろう。