町田洋ほか編『地球史が語る近未来の環境』

地球史が語る近未来の環境

地球史が語る近未来の環境

日本第四紀学会が編集した本。ここ数百万年程度時代の、気候や地形変動の研究成果が集約されていておもしろい。研究方法としては、考古学者も混ざっているが、地学的な手法が主流のようだ。
横山祐典「地球温暖化と海面上昇」で、海水準の変動には、地表に残る海岸線の変遷の情報とともにアイソスタシーによる地殻変動とを考慮する必要が在るとの指摘は、門外漢には非常に興味深かった。
他にもデルタと人間活動の関連について言及している「アジアの大規模デルタ」や大阪の堀やため池の堆積物から、ここ100年程度の重金属などによる大気汚染の変化を追跡した「ため池や堀の堆積物からたどる大気環境の変遷」、国立公園内にもかかわらず、河川改修によって現在の環境が破壊されそうになっている上高地の現状を指摘した「国立公園上高地の未来像」が印象に残っている。
気候変動の研究を細かい部分でどこまで受け入れるかはともかく、これらの研究成果から導き出される激しい気候変動の歴史とここ一万年ほどの安定した気候、そしてここ10年くらいの環境変化で影響が出始めている現代文明の脆さは、考え込まされる。