- 作者: 木畑洋一
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2004/01/01
- メディア: 単行本
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しかし、「総力戦」を歴史学で扱う場合は、社会や感性みたいなところに集中していて、実際の物資をどのように動員したかの情報が少ない。
以下、一章ごとに。
第一章「近代国民国家と戦争」はドイツとフランスにおける国民国家の形成が、両国の相互作用、特に戦争を介した、から生まれた様を活写している。フランス革命時のナポレオンに対する敗北が、ドイツ統一の機運をうみ、それが普仏戦争によって結実。すると、「プロイセンへの復仇」を核として、フランスの国民国家形成が促進されるというプロセスが興味深い。
第三章「アメリカ合衆国と戦争」は、朝鮮戦争とベトナム戦争へのアメリカの介入のプロセスを素材に、アメリカの戦争に対するスタンスを明らかにしている。対象国の国内の論理にたいする無理解という指摘は、今泥沼で足掻いているイラクにも当てはまる。
第四章「第二次世界大戦とソ連の「戦後」」は、ソ連の民衆の戦争経験とそれが社会に及ぼした影響を扱っている。これが一番面白かった。人口の25パーセントに及ぶ被害と耐乏生活。その圧力の下での、わずかな自由と解放への夢想。戦争が終わった後に、なにもなかったように制度を再編成する権力と戦争経験の神話化。救いがない世界だとも、思った。
文献メモ:
G.Wawro,Warfare and Society in Europe,1792-1914,London,New York,2000.
J.Black ed.,European Warfare 1815-2000,Basingstoke,2002
望田幸男『ドイツ統一戦争』教育社 1979
A・ファークツ『軍国主義の歴史2』福村出版 1973