松本仁一『カラシニコフ Ⅱ』

カラシニコフII

カラシニコフII

 朝日新聞の連載をまとめたものの続刊。前の『カラシニコフ』がアフリカを中心としていたのに対し、本書はコロンビア、アフガン、イラクを対象としている。アフリカを扱った前著ほどの迫力を感じないのは、やはり著者がその地域についての経験を持たないためだろうか。特に南米あたり。
 コロンビアのルポに関しては、ノリンコの銃がアメリカに持ちこまれ、それがコカインと引き換えにコロンビアに流れ込む状況。一般のゲリラがどんな人物か。なかなか興味深い。しかし、コロンビア政府の点のつけ方が甘すぎるのではないかなとも思う。コロンビアでゲリラが根強いのは、単純に山地で、統治が行き届かないだけではないのではないかな。アメリカとの関係、統治の問題。ついでに言えば、南米にカラシニコフをばら撒いた責任の一端は、アメリカにもあるわけだし。
 パキスタンのコピー銃製造の村も面白い。部品を分業で生産し、それを組立工房で組み立て、部品にやすりをかけて調整するというのは、昔風の生産風景だなと感心した。『大英帝国の<死の商人>』(ISBN:4062581108)で描かれる19世紀あたりのバーミンガムの銃製造の光景と似ている。また、やすりをかけて調整するというあたりは、日本の38式歩兵銃を連想させる。この村の銃生産が輸入品に対抗できるのは、人件費が安いからか、あるいは外部からのAKの輸入が制限されている状態だからか。そのあたりが疑問に思った。