菊地浩之『日本の15大財閥:現代企業のルーツをひもとく』

日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく (平凡社新書)

日本の15大財閥―現代企業のルーツをひもとく (平凡社新書)

 タイトルのごとく、日本の財閥の解説書。15の財閥を選び、明治から戦前の形成と展開、敗戦による財閥解体、さらに戦後の傘下企業の動向と、現在までをコンパクトに通観する。非常に便利な本だと思う。あとがきで参考書籍を丁寧に紹介しているのも評価高し。
 しかし、三井住友三菱は別格なのだな。バランスよく産業・金融・商事・運輸の企業を保持し、戦後も再結集した。それに比べると、他の財閥は見劣りするし、だからこそ現在では、痕跡が薄くなるのだろう。あと、井上馨や安田・浅野・渋沢などの、人的ネットワークの動きも追求すれば面白そうである。
 興味深いのは、これらの財閥企業にあまり、耐久消費財の企業が存在しないこと。自動車やバイク、家電製品、工作機械など、部品を集めて生産する機械工業の存在が、それほど目立たないように思う。日産コンツェルンの日産と日立くらいか。このタイプの工業と財閥のかかわりが薄いのは、なんらかの歴史的条件があるのだろうか。


文献メモ:
武田晴人『財閥の時代:日本型企業の源流をさぐる』新曜社、1995(ISBN:4788505428
森川英正『日本財閥史』教育社歴史新書、1978(ISBN:9784315402483
斉藤憲『稼ぐに追いつく貧乏なし:浅野総一郎浅野財閥東洋経済新報社、1998(ISBN:4492061061
島田昌和『渋沢栄一の企業者活動の研究:戦前期企業システムの創出と出資者経営者の
役割』日本経済評論社、2007(ISBN:9784818819016
佐野眞一『渋沢家三代』文春新書、1998(ISBN:416660015X
下谷政弘『新興コンツェルンと財閥 : 理論と歴史』日本経済評論社、2008(ISBN:9784818819849
辻節雄『関西系総合商社 : 総合商社化過程の研究』晃洋書房、2000(ISBN:4771011591
奥村宏『日本の六大企業集団』朝日文庫、1994(ISBN:4022607963
法政大学産業情報センター, 橋本寿朗, 武田晴人編『日本経済の発展と企業集団』東京大学出版会、1992(ISBN:4130460439
三島康雄編『三菱財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社、1981
安岡重明編『三井財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社、1982
作道洋太郎編『住友財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社、1982
宇田川勝著『新興財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社1984
三島康雄著『阪神財閥 : 野村・山口・川崎:日本財閥経営史』日本経済新聞社1984
森川英正著『地方財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社、1985
由井常彦編『安田財閥:日本財閥経営史』日本経済新聞社、1986


関連メモ:
財閥 - Wikipedia
系図でみる近現代 第34回 華麗なる一族・神戸の岡崎財閥