J.R.ハリス『イギリスの製鉄業:1700-1850年』

イギリスの製鉄業 (シリーズ社会経済史)

イギリスの製鉄業 (シリーズ社会経済史)

 産業革命の時期のイギリス製鉄業の概説。入門としてはいいと思うが、訳が直訳的で読みにくい。なんか原文を復元できそうな感じの訳文。このあたり、原文に忠実に訳すか、思い切って日本語としての読みやすさを追求するか、難しいものがあるのだけれど。
 18世紀を通じて木炭製鉄業が存続した状況と木炭の供給が逼迫した証拠はないという指摘。鉄の生産量の変化とコークス高炉など石炭使用の拡大、製鉄業者出自など、関連トピックを簡潔にまとめている。『Dictionary of National Biography』や地図と首っ引きで読むべき本だな。買うか。
 木炭供給の問題は興味深いが、この問題に関しては、石炭産業の状況や他のエネルギー需要などを考慮すべきだろうな。18世紀前半あたりまでは、供給はバランスを維持していたようだが、それは他の産業が先に石炭に転換したという状況も影響しているのだろうし。精錬の過程で石炭が使えなかった結果、鉄工業が最後まで木炭をエネルギーとする産業として残ったというのが興味深い。あと、この時代の製鉄業に関わった人々を研究するには、他の非鉄金属産業などにも視野を広げる必要がありそうだなとか。いろいろと興味深い。