Togetter 図書館で新刊本の貸し出し制限は妥当か

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 最初の方を読んだだけだが、なんかこの手のポジショントーク丸出しの議論にはうんざりする。全体として、文芸分野の利害を色濃く反映している。つーか、この議論で出版社の幹部が言っていることが一番胡散臭い。
 「新刊の貸し出しを猶予してくれとお願いしている」というが、それを可能にするためにどれだけのコストがかかるのか。システムをそれ対応に改修したり、特定の書籍を除けるためにかかるコストがどれだけになるのか。例外処理ってものすごく手間がかかるんじゃないの。そこの感覚が全く抜けている。そのコストをだれが負担するのよ。そういうなら著者側で負担すればどうか。
 あとはベストセラーの特殊事例と自分の著書の扱いをごっちゃにしているところや「ストック」と「フロー」をどうえり分けるかも、実際にどうすればいいのか技術的問題を全く無視した議論をするあたりもうんざり。ベストセラーは需要が高い、すなわち分館や移動図書館などにもくまなく配置する必要がある。いきおい全体としては数が増える。それと普通の本の事例ではずいぶん違うはずなのに、意図的にごっちゃにしているのではないか。後者にしても「資料性の高い本」なるものを選び出すこと自体が難しい。フローなものに見える本でも、見方を変えれば資料性が高かったりする。言うほど簡単なものではないと思う。
 そもそも、よっぽど需要が高い本を除いては、本が図書館に入るまでに何カ月かかかっているのが普通だろうとか、貸し出し実績以外で資料費を確保する指標に何があるかを明らかにするべきとかいろいろ思うところがある。近年、どこでも資料費は削減されている状況で、「無料貸し本屋」を批判する人は役人や政治家を説得する理屈をちゃんと提出すべきだと思う。

だいたい著作物に関して無償で読む(見る)権利なんてないはずなんですけどね。なぜ文学だけ例外なんだろうとは思っていましたが。

 なんだかなあ。既に再販制度著作権そのものによってかなり保護されていることを無視している。文化的に重要であるからこそ、経済的原理からある程度保護される一方で、図書館の貸し出しなどでの読書空間の維持に協力する義務も出てくるのではないか。こういう形で権利強化の主張が出てくるようなら、再販制度の適用に賛成できなくなってくるのだが。


 個人的には、そのあたりの本を借りたりすることはないから別にどうなろうと知ったことではない。というか、賞味期限が短いフローな本が図書館から排除されるようになるから、むしろありがたいくらい。まあ、奥付に遠慮してくれと書いた作家の本が図書館に入りにくくなるだけだと思う。
 岩波新書中公新書講談社選書メチエあたりの新書・選書あたりに、こういう動きが及んでくるとちょっと嫌だけど。あんまりタイムラグが空くのはな。つーか、なんでもかんでも半年貸出禁止とかなると、学術書しか借りない人間にとっては結構迷惑なのだが。

現実的に考えて 図書館はくそまじめなので著者のお願いはわりと守る→貸出できない小説を買っておいておく余裕は図書館にはない→発売後半年は買わない→発売後半年もたった小説はリクエストか賞でもとらないかぎり買わない→ほとんどの図書館がその本を買わない というのが予想される、だけですよ。
http://twitter.com/myrmecoleon/status/41072167214911488

まあ、そんなところだろうな。

承前)新館→新刊に謹んで訂正。購入側に内在する問題点は可処分所得をどこに振り向けるのかと本を置く場所がないという2点に絞られてくると思う。だとすれば図書館に代わる文芸レンタル本業種を立ち上げた方が前向きな解決策になると思う。
http://twitter.com/mdsch23/status/41312574238621696

承前)なお文芸書の貸出は図書館の本務とは私には思えない。また図書館の成り立ちなど考えると彼らに課金するのは無理でしょう。貸出は無償で課金体系が存在しない。今の行政ダウンサイジングの方向を考えるとそのような事をやるぐらいなら貸出業務は廃止すると思う。
http://twitter.com/mdsch23/status/41313821486227456

承前)加えて図書館の資料購入予算は300億円程度に過ぎません。ここでSARAHのような貸出金回収団体を作ったとしてどの程度著者に配分されるのだろうか。多分事務コストで吹っ飛ぶと思う。リアル紙本限定で考えれば、レンタル本業にもっと注力されて然るべきだと思う。
http://twitter.com/mdsch23/status/41314904770093056