北米マンガ事情第7回 「内向きに閉じた日本のマンガ市場」

 正直、レイプレイ騒動以来、この手の表現の国際交流というものに、興味がなくなった感がある。規制の輸入とか、ポリシーロンダリングとかを考えると、アメリカ市場とはかかわり合いになりたくない。あと、読者の大半が必要としていないものを、わざわざ輸入する必要があるのかな。紹介の仕方によっては売れるかもしれないが、FPSと同じで、日本市場では興味を持たれない可能性の方が高いと感じる。

私見では日本のマンガよりも大きい理由だと思うのが、コミックスの出版社と映像メディアとの連携である。例えばスーパーヒーロー作品で映画化を積極的に推進してきた大手コミックス会社マーベルは現在ディズニーの子会社である。他には昨年『スコット・ピルグリム』という、映画化もされた大ヒット作品を出したOni Press社もそのひとつだ。この会社は昨年大手テレビ番組制作スタジオと、自分たちのコミックス作品をテレビのアダプテーション用として、そのスタジオに優先的に権利を与える契約を交わした6 。今年は更にエージェント会社と契約して、自社作品の映像化を積極的に売り込んでいく予定のようだ。7。


つまり日本でもよくある、映像メディアの原作としてのコミックスである。もちろんこの動きは今に始まったことではないが、対象となるジャンルが広がっている。これが意味するのは、原作としてコミックスを制作スタジオに売るために、つまりは一般の観客向けの映像作品にふさわしい原作になるよう、出版社がコミックスのテーマや内容を変えようと動きだしている、ということだ。日本のマンガがこのアメリカのコミックスの流れを無視する余裕は本当にあるのだろうか。

 それこそ、日本の出版物がアメリカの倫理コードによって規制されることになりかねないのでは。ハリウッドで売るのと、アニメで売るのでは、要求される無毒化の度合いもずいぶん異なるだろうし。あと、日本の漫画読者がハリウッド向けを前提とした作品を受け入れるかどうか。日本の漫画などをもとにしてつくられたハリウッド作品が、日本国内では必ずしも評価を受けていない状況を考えると特に。