熊本大学附属図書館貴重資料展と講演会に行く

 毎年、この季節にある熊大図書館の貴重資料展と、その講演会に行く。だいたい、毎年、熊大の学園祭と一緒に行われるのだが、今年は熊粋祭は来週で、単独の開催。今年のタイトルは「永青文庫資料にみる肥後の街道とその景観」。幕府の巡検使に対応して描かれた道中絵図と宿泊接待のための御客屋の指図が展示されている。延享3(1746)年の諸国巡検使が通った、三池から玉名高瀬、薩摩街道ルートと復路の高森-坂梨-内牧-大津-菊池-山鹿-南関の沿道の景観を描いた絵図。天保10(1839)年に、五家荘の天領を視察した御料巡検使の移動ルートの沿道景観図、細川家の殿様が巡視を行った際に行った名所の解説のために作られた隈部氏館、竹迫城跡、七滝、甲佐の簗場に関連する絵図などが。
 講演は、それらの資料を順に紹介していく感じ。演者の北野隆氏は、もともとは工学部の建築史の教授で、現在は文学部の永青文庫研究センターの特任教授だそうだ。巡検使が通ったのは、あまり大きくない街道が主体であり、村々の道であったこと。巡検使を藩の施設である御茶屋、特に奉行所が併設されたものに泊めるわけにはいかないので、町屋や農家を一時的に改修して宿泊させたこと。その結果、今まであまり見られなかった民家の建築の指図が多く残されたと言う。巡検使は三人組で、宿泊場所は三か所が必要だったこと。主な内容としては、巡検使の居所としての畳床や、玄関、御成門など。これらを通じて、武家的な建築様式が、町屋や農家に移入されたと指摘する。
 これらの宿舎として利用された家は、土地の有力者で、その土地では大きな商家や農家が選ばれたと思われるが、それらの家は名誉とか実利があったのだろうか。費用請求のためのものであったのではないかと指摘されているが。あと、市街地はともかくとして農家なんかだと、今でもどこか比定できるのではないだろうか。あるいは、慣れていれば、この指図をもとに家の模型を作ることができるのかななどということを考えた。全部ではないが、屋根が瓦か茅葺かとか、柱も記入されているものがあるので、見方を知っていれば、復元なんかも可能かなと感じた。