「熊本市被災文化財のいま」展 講演会「文化財レスキューの現場」

 本日は、現代美術館の講演会に出撃。「熊本市被災文化財のいま」展に関連して、熊本市立熊本博物館の歴史担当学芸員の木山貴満氏による、文化財レスキューの現場の話。写真が多くて、こういう現場なのかとわかりやすかった。梅雨時の大雨で、雨漏りして、水損している史料が多かったという。昨年は、大雨が降ったしな。
 最初は、地震直後の熊本博物館の被害の話。プレハブ倉庫では、プラスチックコンテナに収められた考古資料が散乱。再整理に苦労していると。また、展示品は梱包されて、契約倉庫に収納されているが、こちらも一部が落下。液浸標本が破損。ただ、金属のラックを並べただけのプレハブ収蔵庫の被災状況に比べると、業者の倉庫は被害が少ないように見えた。博物館の収蔵庫も、免震ラックの整備などの地震対策が重要かもな。
 分館扱いになっている塚原歴史民俗資料館も、常設展示のケース倒壊とか、ラックを固定してた鉄材がねじれていたり、なかなかの被害状況だった模様。再現されていた高床式倉庫と竪穴住居も損壊。重要文化財の台付舟形土器は、前震時に、安全な場所に移して無事だったと。
 熊本城の天守閣も、熊本博物館の分館になっているが、二ヶ月入ることができなかった。その間に、風雨にさらされて、史料が水損していたと。6/15以降に、数度に分けて搬出。まだ、全部は搬出されていないと。もともと、天守閣の建物は、文化財の展示場所としては、コンディションが悪い場所だったと聞くが、今後はどうするのだろうな。波奈之丸の船屋は、予定通り本館に移転だそうで。


 後半は、文化財レスキューの話。4月後半から、熊本市内の各地で回収作業と、回収した文化財の修復が行われている。やはり、建物全体が破損して、雨漏り→水損というパターンが多い。で、仮置き場として確保した建物も、雨漏りで一階ロビーに水溜りという。コンクリの建物でも、盛大に揺さぶられると、雨漏りするのだな。
 場所としては、町屋が残る古町・新町と震源に近かった沼山津の事例が多い。沼山津は、先日行ったが、古い農家建築が解体されて、本当に様変わりしてしまっていたな。あとは、お寺や神社からのレスキューとか。こういうの、どこまで書いていいのかね。
 7月13日以降は、文化庁によって「文化財レスキュー事業」に組織された。


 文化財レスキューから得た教訓としては、安全確保の重要性。今回の件では熊本博物館がリニューアル中で余裕があったが、通常の開館時には、再開にむけてリソースが取られて、活動が難しいだろう。どこから、人間のリソースを集めるか。
 「先祖からの預かり物」というフレーズが印象に残ったな。そのような意識で残されてきたものが、新出史料として、明らかになっていると。また、文化財は概念を広く取れば、身の回りのすべてが文化財と言えるが、どれを保存するか取捨選択が難しいと。
 実際問題、地震で家財の整理を迫られた家庭は多いというか、阪神大震災でもそうだったようだが、安全確保のために断捨離に走る家が多いんだよな。