マスコミが「政治報道」できなくなった理由 御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【第3回】:日経ビジネスオンライン

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 主に新聞の政治報道の在り方の問題点について。「政治記者」の養成の問題、時代の変化についていけていない状況など。小沢も関わった不信任決議の騒動の時は、マスコミのはしゃぎっぷりにどんびきしたな。あれでは、「報道」ではなく、マスコミも「政局ごっこ」の一員に過ぎない。あんなのに金を払う気にはなれない。最近、新聞は読み流しが基本だよな。地方面、書評面、文化面あたりしか読まないなあ。
 しかし、記者会見で全然、発表者の方を見ていないというのはアレすぎる。それで、ちゃんと質問できていればともかくとして、まともな質問ができないということは、打ち込みに汲々としていて、内容を吟味咀嚼できていないということだからな。速記録なんかは、それこそ記者クラブでまとめて記録して配布すればいいんだよな。むしろ、そういうの、最近は省庁のサイトに全文アップされていたりするしな。そこからどのような意味を汲みとれるかが大事なのに。

御厨:日本の政治記者と米国の政治記者とでは親子ほどの年の差がある。その差がそのまま政治ジャーナリストとしての経験値の差でもある。正確にいえば経験不足ということが大きいと思います。

御厨:若さそのものが悪いわけではないのですが、政治報道の現場に経験豊富な記者が少ない、というのはやはり問題です。正しい政治報道には場数と知識量がかなり必要ですから。

 ベテラン政治記者の欠如。記者のキャリアパスの問題なんだろうけど。

御厨:現場の若手記者を本社から指示するデスクたちの世代的な問題が大きいのだと思います。彼らが若手記者として現場取材をしていたのは、自民党政権時代。だからどうしても自民党政治に対する取材のやり方を踏襲しがちです。このため、民主党の政治に関する動きも、自民党時代の取材方法で対応としようとする人たちが少なくない。

池上:たしかに民主党が「自民党時代の根回し政治はやめて、オープンな場で議論をして政策を作っていこう」と試行錯誤していることを、それまでさんざん密室政治や根回し政治を批判してきたマスコミ側が理解しきれていない、と感じます。

御厨:官僚が担ってきたプロセスを排除する動きは、政府の審議会などの会合でも広がっています。官僚OBが一人も委員の中に含まれていなかったり、官僚が事前の根回しをしない会合も増えています。

 ところが、こうした民主党のやり方にケチをつけるのが、マスコミだったりするんですね。

 一例をご紹介しましょう。

 とある審議会に、マスコミOBのAさんが参加していました。ところがこのAさんが私にこの審議会はうまく動かないだろう、と話すわけです。「なぜですか」と聞いたところ、Aさんの答えは、「官僚OBの大物が入っていないからですよ。この会議はうまく回らないでしょうね」。そこで、私はこう言いました。「自民党政権時代、Aさんの新聞社が何を主張されていたか覚えていますか。官僚OBを排除せよ、と盛んに書いていたでしょう。民主党政権になって、官僚OBが排除されたわけです。まさに書いていらした通りになりました。むしろ喜ぶべき事態ではないですか」そう言ったら、露骨に嫌な顔をされてしまいました。

 同じくマスコミOBのBさんは別の審議会のメンバーに選ばれたあと、私にこう漏らしました。「この会議はダメだよ。事前に根回しが来ないじゃないか。不安でしょうがない」。私はこう言いました。「Bさんの新聞社が、出来レースの会合はダメ。まず委員への事前の説明はやめろと書いたんですよ。その通りになったんです」というと、これまた嫌な顔をされました(苦笑)。

池上:新聞もテレビもマスコミは自民党政権時代に「国民の目の届かない裏ですべてが決まっている」「オープンの場で議論しろ」と批判しました。これを民主党は愚直に、なおかつ稚拙に、その通りやっている。あえて言えば、彼らは彼らなりに理想を目指している。ところが、オープンにすると、今度は、「根回しが足りない」と批判する。マスコミの論が、反対のための反対になってしまっている。

 時代や手法の変化についていけてないマスコミ。まあ、稚拙なのは確かだけど、こういうオープンな手法は必要ではあるわな。あと、こう言われたマスコミOBが嫌な顔するのは当然だろうな、面と向かってバカにされているわけだから。しかも、言い返せない正論だし。