熊本県立美術館「「美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」

 基本的にはディック・ブルーナをメインにした展覧会。気付いたら、会期が終わりそうになっていて、慌てて見に行くことに。なんでか、ディック・ブルーナの絵本って、あんまり読んでないんだよなあ。で、あんまり興味なかったのだけど、入ってみると、なかなか楽しめた。
 前半は、1997年刊行の『うさこちゃん びじゅつかんへいく』の構成をもとに、県立美術館の収蔵品を展示。もとの本が現代美術指向だったために、あまり見たことのない絵画がたくさん出ていて、楽しい。ベルナール・ビュフェ「くわがた」は完結にクワガタの力強さを表現しているところが、浜口陽三「西瓜」はスイカの赤が毒々しい感じ、岩田恒介「K.C.Work(触知感)」のなんか微妙に汚い布のアーチ状の表現あたりが印象深い。
 あるいは、白野文俊「内と外(立)」は、ガッとグレーの油絵の具を分厚く塗ってある作品だけど、大判はなかなか映える。サム・フランシス「四つの季節」は、4枚の版画?これも大判でカラフルなので、展示室で映える。ジョセフ・アルバース「フォーミュレーション:アーティキュレーション」は色彩と幾何学的な形がおもしろい。


 とりあえず、漆芸品がどれも素晴らしい。
 高野松山「柏・木菟之図蒔絵衝立」はかなり大型の蒔絵の衝立。柏の葉が、何枚も別のところで作った葉を張り付けた感じの立体感で印象的。増村益城「乾漆盛器(日の丸)」は、中央の赤い円の外縁部のグラデーションがいい。
 そして、音丸耕堂作品が三点。何層も色違いで塗膜を塗り重ねて、それを削って、カラフルな意匠を作り出している。これ、本当に良いなあ。




 後半は、ディック・ブルーナの作品作りに焦点を置いて、たくさん作品を展示。シルクスクリーンとオフセットがあって、シルクスクリーンの作品の中には○○/○○とシリアルナンバーらしきものと手書きサインが鉛筆?で入れられているものがあるけど、これ、どういう来歴なんだろう。


 とりあえず、キャリアの最初のカバーデザイン千本ノックが印象深い。親の会社を手伝って、大量に出版されたペーパーバックの表紙デザインを手がけている。その数は2000点にのぼるそうで、千本ノック2回。
 フェルナン・レジェの作風に影響された太い線でガッと描いたもの、マティスの切り絵(色彩と形の平等の追求)の影響を受けた色遣い、写真を利用したもの、タイポグラフィを取り入れたもの、同じモチーフの繰り返し表現など、いろいろな方法を試行錯誤している。その中で、後の絵本に通じる、そぎ落とした作風が磨かれていくことになる。
 キャラクターの象徴を形を変えながら表現するのがおもしろい。「メグレ警部」シリーズでは、パイプを象徴として繰り返す。ハファンク「シャドー」シリーズの、タバコを吹かすキャラを手を変え品を変えて表現したり。レスリー・チャータリス「聖者」シリーズでは、棒人間に頭の輪っかで「聖人」を表現してみたり、ジャン・ブリュース「O.S.S.117号」シリーズでは、フロックコートの人物のシルエットと、シルエット化したキャラを多用しているのが印象深い。


 続いては、原画の制作風景。
 トレーシングペーパーに描いて、画用紙の上でなぞって線を付けて、ポスターカラーでスミ入れ。それを透明フィルムに焼き付け、本のサイズの方で構図を検討。その後、裏側に色紙を宛がって、色を検討する。基本的に4色しか使っていないからできる方法でもあるな。オランダの芸術運動「デ・ステイル」の影響を赤・黄・青に緑の4色、それに特定のキャラ用カラーの茶とグレーの6色シカ使っていない。それぞれの色で、感情や場面を表現しているというのも、おもしろい。


 1955年のミッフィーの原型が展示されていたけど、現在のとはずいぶん違う。その後、1963年の改訂で現在のスタイルに。単純な顔は一種のピクトグラムとか、正面を向いた顔は読者との対話を目指しているからとか、解説が興味深い。