熊本県立美術館「細川・美術館コレクション 1」展後期展示

 梅雨が来てしまうと、降っている時は出かけないので、そのまま会期が終わってしまいそうなので、貴重な晴れ間を利用して見に行く。平日午後は人が少なくて、なかなか快適。
 「細川家の武具と大名道具」では調度品と小袖が入れ替わり。「細川家ゆかりの近世絵画」では二点が入替え。第二室では仏教美術が2点、刀剣が2点、近代日本画が全部入替え。半分とは行かないけど、かなり展示替えされている。
 寄託品は撮影不可で、かなり撮れないのが多かった。特に近世絵画。


 とりあえず、お気に入り絵画は、堅山南風「争魚」、矢野吉重「日の出老松図屏風」、福田太華「施無畏尊者図」かな。

第一室

 展示室は三室構成で、第一室は近世細川家関連の品々が展示される。武具、調度品、小袖、近世絵画。
 調度品は、細川斉護室益姫の嫁入り道具が、櫛台からお歯黒の用品にチェンジ。撮影不可。「黒漆塗菊唐草蒔絵耳盥」「黒漆塗菊唐草蒔絵台輪」「黒漆塗菊唐草蒔絵鍍金箱」のセット。たらいの上に道具を載せて、その上でお歯黒を施す。金属製の道具類の細工がこまかくてすごい。


 近世絵画は、「領内名勝図巻」が巻き替え。「葡萄棚図屏風」「日の出老松図屏風」「老松牡丹図屏風」の3点が新たに展示。
 「領内名勝図巻」は女島神社から湯浦、佐敷あたりの情景の部分が広げられている。地図で見ると、それぞれお隣の入り江というか、河口なんだな。湯浦川と佐敷川は河口で繋がっているし。地名としてはさぎの浦や佐敷の内陸部にかこい村、中村、山下村という表記があるけど、地理院地図では判然としない。
 「葡萄棚図屏風」は作者は矢野派の人物とされているけど、画風は狩野派のものという。葡萄の房の描写が写実的で、現物を見る機会があったのだろうかという感じ。葡萄はたくさん実を結ぶことから、多産、豊穣、長寿の吉祥モチーフなのだそうな。
 「日の出老松図屏風」と「老松牡丹図屏風」はどちらも、矢野吉重の作と伝えられる作品。どちらも熊本城本丸の松の間の障壁画やふすま絵だったのを屏風に仕立て直したようだ。前者は、これぞ矢野派という感じの絵。


 「龍打出浅葱糸威し南蛮胴具足」。武具類はあらかた通期展示。前回も写真を紹介しているけど、今回は手足に注目。籠手や臑当てが鎖帷子になっているのは、越中様と違うなあ、と。





 「白地唐扇花卉模様小袖」。前期から展示替え。14代細川護久夫人の宏子所用のもの。これは永青文庫ではなく、県立美術館収蔵品だから撮影可能、と。染と刺繍の量がすごい。




第二室

 第二室は仏教美術、近世絵画、同田貫の刀剣と熊本の美術工芸品と細川護立コレクション内の近代日本画が展示される。
 仏教美術は、「十一面観音菩薩立像」と福田太華の仏画は通期展示。大きい仏像はそれだけでいいなあ。
 「池辺寺縁起絵巻」が巻き替えで「金子観音」のエピソードに変わり、その伝説の観音像が展示。金子という篤信者がいて、御利益で「国主綱家」の妻となった。そして、観音堂を建てたがそれが後に火事となった。しかし、観音像は17-8世紀の作らしい。作られた伝説?
 那智熊野座神社の懸仏は、「十一面観音坐像懸仏」から「千手観音坐像懸仏」にスイッチ。鎌倉時代中期だから、ずいぶん歴史のある作品。


 近世絵画は変化無し。刀剣は二点とも入れ替わりだけど、そもそも刀剣の区別が付かないので、帰ってリスト見て気付いた。


 細川護立がコレクションした近代日本画は、全部が入替えで、横山大観の絵が二点「山路」「山窓無月」と小林古径「髪」、堅山南風「争魚」の4点が展示。
 個人的には、「争魚」がすごく好き。灰色と青色が混じった地に、入り乱れる鱒の姿。産卵シーンなのかな。背景というか、地の色の青色がすごく良い。あとは、争う鱒たちの円形の配置。割とピンとこない作品が多い画家なんだけど、前期に展示された「霜月頃」と本作はいいなあ。
 「山窓無月」は、漢詩の一シーンだそうだけど、暗い竹林のなかで、隠者の読書の灯りだけが浮かび上がっている姿が印象深い。
 「髪」は国指定重文。国外の画風も取り入れた作品だそうで。召使いが、女性の長い髪をくしけずっているシーン。主人は手間暇かかる長い髪で、召使いは肩まで掛からない短い髪なのだな。


 「刀 銘肥後同田貫宗廣作」。江戸時代末期に同田貫派を復興させた中興の祖か。



 福田太華「魚藍観音図」



 福田太華「白衣観音図」



 伊藤若冲「鶏図」


第三室

 第三室西洋近代絵画と熊本の近代洋画は、入れ替えなし。
 フランスの近代絵画は、基本的にはいつものメンツ。「鹿狩り」とヴラマンク「湖畔」が好きかな。前者、よく見ると、猟犬12頭でしか一頭を追い回しているのか…
 熊本関連洋画家作品では、牛島憲之「秋川」が好き。


 ウィリアム・アドルフ・ブーグロー「キューピット」、きれいな絵だけど、古典主義だなあという感想しか出てこない。そもそも、人物画の類いに興味ないしな。