熊本県立美術館コレクョン展「新収蔵品展:新しいくまもとの宝もの」

 昨日、まとめた永青文庫展と続きで行われている展示。昨日はまとめきれなかったので、別立てで。タイトルの通り、新たに購入、寄贈、寄託された収蔵品のお披露目。熊本に関連する近世美術、文化財、近現代の熊本関係美術家の作品とそれに関連するフランス美術の三本立ての展示。


 近世の美術品に関しては、新たに寄贈された大岡春卜「山水人物花鳥押絵貼屏風」、山鹿市大宮神社から寄託された「三十六歌仙図扁額」、細川家の調度類など。三十六歌仙図扁額は、土佐光起の作品。秘蔵されてきたようで、江戸時代の作品と思えないほどの保存状態。
 「山水人物花鳥押絵貼屏風」は、写真撮影可だったので、パシャパシャと。何というか、優しい線の画家だなあ。狩野派って、特に水墨画はもっとゴツゴツした感じの絵を描くと思ってた。いや、流派の知識とか、限られているんだけど。



 鳥の絵がいいなあ。特に一番右のが。




 左隻中央部のお猿さんが、なんともユーモラス。薄墨で描かれた姿が愛らしい。日本の猿と言うより、クモザル系統みたいな雰囲気だけど、なにをモデルにしたんだろう。




 左隻右の山水画、こちらもふわふわとした感じが異彩を放つ。特に、右側の崖の中程を通る道路とか、もっとゴツゴツした絵になるのが普通だと思うが。全然険しくないのがちょっと楽しい。




 第二部は神像。荒尾市の賀庭寺跡観音堂の木造天童立像、それに熊本地震で倒壊した菱形八幡宮に祀られていた神像19躯のうち4躯ずつ、前後期にわけて展示。被災前の写真と並べて紹介されているけど、かなりの期間、倒壊した建物の下で水損・カビの被害を受けて、ディテールが薄れている。平安時代の神像がきっちり守り継がれてきたのがすごいなあ。
 同じく菱形八幡宮の木製狛犬も展示されているが、こちらは14世紀、南北朝時代のもの。割ときっちりとした唐獅子スタイル。写真撮りたかった…!
 年代からすると、藤崎八幡宮に所蔵されている狛犬と同年代で、熊本県最古級なのか。というか、神像含めて、全部、文化財指定されてもおかしくないものだなあ。


 近現代美術分野では、絵画と版画が収蔵。
 坂本善三が抽象表現に行き着く前の作品や藤田嗣治のカフェの準備のスケッチ、荻洲高徳の「モンマルトルの旧役場」、宮崎静夫の作品、熊本出身現代美術家として新たに蒐集がはじまった佐々木耕成の作品や写真帳が展示。個人的には「モンマルトルの旧役場」が好き。
 また、近代版画については、熊本出身のコレクターにまとまって寄贈を受けたものが展示。銅版画がメインかな。いまいち、近代版画は楽しみ所が分からないのだが…


 最後は新収蔵品ではなく、西洋近代絵画のコレクションの常設展示。ルノワールの「胸に花を飾る少女」をはじめ、19世紀後半から20世紀半ばあたりのおなじみの作品が並ぶ。
 個人的には、19世紀広範あたりのフランス風景画が好みで、アレクサンドル・ドゥフォーの「鹿狩り」が良いなあ、と。



 あとは、海老原喜之助の「雪景色」もよかった。