熊本県立美術館「よみがえった名宝―修復された細川コレクション」展

 比較的会期が短いので、終わらないうちにと、急いで出撃。
 2008年に基金を作って修復を続けてきた文化財のお披露目展。何百年かすると、絵画も傷みが激しいのだな。虫損、破れ、糊の剥がれなど。これらを、新たな裏打ちや和紙の充填で補う。あとは、表面の汚れの洗浄など。物によっては、かなり派手に破れているが、屏風も掛け軸も巻いたり、動かしたりするから、どうしようもないところがあるのだろうな。
 どれも、大型の屏風・障壁画で迫力がある。「帝鑑図屏風」、モンゴル人の狩猟を描いた「狩猟図」、「西王母・琴高仙人図屏風」、「竹林七賢図屏風」など。屏風の骨組みや表装も新調して、ピカピカに。
 途中で骨組みなどを取り替えていないなら、C14分析とか、いろいろとおもしろそうだけど。
 あと、「帝鑑図屏風」は、画面を剥がした後の裏打ち紙が展示されているけど、ガッツリ裏紙文書が残っていて、丁寧に剥がして、読んだら興味深そう。なにに関する文書なんだろう。裏側から見て、文書の素性を推定するとか、全然無理だけど。


 近代に入ってからの作品は、上村松園の「月影」のみ。やはり、修復が必要なのは、近世のほうが多いわな。


 第三展示室は、近代絵画メイン。有村生馬「女学生」とか、野田英夫「バス内」は、見たことなかったような気がする。敗戦直後に描かれた宮崎精一「夜明け」が印象深い一作。
 熊本関係の近代絵画の蓄積もなかなかのものだなあ。


 熊本地震で被害を受けた絵画が一番、印象に残る。
 「波奈之丸」に備えられたという、大名家の指物や船の旗を並べた「旗指物図屏風」がおもしろい。西国大名の船の旗が並ぶが、本当にいっぱい居たんだな。分家支藩のもきっちり入れられているのが印象的。
 個人的には、伝矢野吉重の「月に梅図屏風」が印象深い。写真可ということで、何枚か撮影。かっこいい。





 しかし、収蔵庫の屏風棚がぶっ壊れて、多数の屏風が破損って、文化財の保存ということから考えると大問題だなあ。