熊本県立美術館「美術館コレクション Ⅲ」

 県立美術館の収蔵品を紹介する展示。今回は「かたち」に注目したチョイス。例によって、三展示室中、第一、第二展示室は細川家の持ち物を中心とする近世の絵画類、第三展示室は近代熊本に関連する洋画家の作品がメイン。
 とにかく大型の屏風絵が多く展示してあって、楽しい。特に、「月に梅図屏風」がかっこよすぎるのだが。
 近代絵画は、大型の抽象絵画が多め。そこから何を読み取るか、か。何も考えずに見て想起するものとタイトルがけっこう違うのがおもしろい。

山の「かたち」、岩の「かたち」

 第一室は山水画。流派によって、岩の線を替えて自己主張するそうだが、細川家所蔵の絵だと、雪舟に学んだ矢野派のゴツゴツした絵がメインになる感じか。大型の屏風絵が三点。


 周徳「破墨山水図」。抽象度が高いなあ。雪舟の直弟子の絵画というのがすごい。



 矢野雪叟「富士三保清見寺図」。伝雪舟の同名図を忠実に模写した作品。



 矢野茂安「山水図」。矢野派の絵にしては、全体的に優しい雰囲気の絵だな。後景の山のふんわり感がそう思わせるのか。



 矢野雪叟「山水図屏風」。デカいとそれだけでいいなあ。室町後期風の絵か。



 衛藤良行「琴棋書画図屏風」。これもデカい奴。左が琴と絵、右が囲碁と書という配置のようだ。整ったというか、安定感のある構図。



 矢野雪叟「旭日に猛禽図」。猛禽がかっこいい。




 矢野良勝「波濤図屏風」。波の表現がおもしろい。





 田能村直入「松陰高士図」。後ろの山が完全にサボテン…


花の「かたち」、木の「かたち」

 とりあえず、最初の「月に梅図屏風」がかっこよすぎるのだが。どれも大きな作品で見応えがある。福田太華「月次四季花鳥図屏風」が美しいのだが、残念ながら撮影禁止。旧暦だと、正月は2月だから、梅が最初なのかな。


 伝矢野吉重「月に梅図屏風」。かっこいい。元は妙解寺の障壁画だったのを、幕末に屏風に仕立て直したそうな。





 衛藤良行「花鳥図屏風」。花より竹の色鮮やかさが印象に残る作品。蛇籠の盛り上げ表現や雲の金箔など工芸的色彩が強い、と。なんか、モズが好き。







 福田太華「墨梅図」。これも、なんかかっこいい。


人の「かたち」

 まあ、近世美人画にはあんまり興味が無くて。そういえば、疫病避けといえば鍾馗が活躍するかと思ったら、「アマビエ」という流行神が出てきて、あっという間に忘れ去られつつあるのが興味深い現象だよなあ。


 日収秋潤「蜆子和尚図」。ロックな狩猟採集生活を行った禅僧の図。



 葛飾北斎鍾馗図」。かっこいい。目が特徴かな。


第三室

 近代の絵画を展示。結局写真を撮っていないけど、海老原喜之助「雪中群鳥」、坂本善三「構成」、大塚耕二「群鳥」あたりが印象深い。
 抽象絵画って、こうして紹介されるとおもしろいけど、じゃあ、物の良し悪しが分かるかというとそうでもないなあ。素人の作品でも、いい感じというのがあるし。