- 作者: 塚本勝巳
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/06/16
- メディア: 新書
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塩分フロントの南下によってウナギの産卵場所がだんだん南下しているという指摘が不安だな。産卵場所が南下すると、親潮に乗れなくて、再生産が難しくなる可能性が指摘されている。まあ、今のところ「無効拡散」になっている熱帯方面に流されているニホンウナギが、なんらの偶然で特定の地点に新たな産卵場を形成する可能性はなきにしもあらずではあるけれども…
以下、メモ:
つまり、人間が行う様々な放流事業は、現時点では天然の再生産能力に遠く及ばず、天然の再生産を高める努力をするのが最も効果的だとわかった。いわば、ぐるっとひと回りして。最後は平凡な結末になるという「ねずみの嫁入り」のような結論になった。いろいろ人の手を尽くし、研究の努力を払い、最後は最も身近で、単純な天然の再生産を保護するという昔ながらの方法が最良であるという結論に至ったのだ。p.40
まあ、そういうものなのかもなあ。
また、ウナギの産卵はヒレジロアナゴのように海山そのものにべったりくっついて行われるものではないということも明らかになった。外洋の中層を回遊して産卵場に到達したウナギが、少なくとも「海山に潜んで旅の疲れを休め、次の新月の産卵開始を待つ」ということはないようだ。スルガ海山などの頂上が海面下数メートルから数十メートルの高い海山ならいざ知らず、南の低い海山群では、その頂上であっても水温が数度と低く、産卵を控えた親魚の生理にとって環境条件としては不適である。ギャップより南の低い海山群も産卵に使われるとしたら、ウナギの産卵に海山が直接、産卵場所を提供するということはない。
しかし、だからといって直ちに海山は産卵行動に全く関係ないというわけではない。むしろ低いながらも多数の海山が点在する海域なので、親ウナギの産卵生態にこれら海山が何らかの重要な役割を果たしていることは明らかである。海山の重要性は、採集努力がネガティブデータを含めて広い範囲でなされているプレレプトセファルスの調査結果を見ても明白である。
海山の“待機場所”や“休憩場所”としての役割は否定されたが、雌雄の出会いのための“目印”や親ウナギの旅の“道標”としての海山や海山列の可能性は残っている。水中での親ウナギの視認能力は限られているので、海山によって生じる乱流や地磁気の特異点、あるいは地形によって生じた重力異常などを調べて、親ウナギの産卵地点決定や産卵集団形成の鍵となる環境条件を今後明らかにしたい。p.181-3
狭い意味での「海山仮説」は否定されたが、全く無関係ではないということか。