- 作者: 須藤 斎
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/11/19
- メディア: 新書
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ボーリングのコアを押さえるコアキャッチャーとか、海底の地質によってはコアキャッチャーで押さえきれず、流れ落ちて回収できない事もあるという話や、掘削作業の際にはどうしても船が動いてしまうので、ドリルパイプが曲がる余地のある深海の方が掘削しやすいこと。水深の浅い海域での掘削では、できるだけ移動しないようにすることが要求される分、かつては大陸棚での掘削は難しかったことなどが興味深い。
やはり著者の専門だけに微化石の研究についての記述に多くのページが割かれていて、微化石の同位体を利用して堆積時点の環境を復元したり、特定の種の生息年代を利用した相対年代の決定などの研究手法が紹介される。しかし、微化石の種の「同定」って難しそう。あと、近年は遺伝子の解析から、分類群の変更がガンガン行われているけど、そのあたりは微化石というか、珪藻や有孔虫の分類にどの程度反映されているのだろうか。
また、堆積物中に入っている水(間隙水)の中に含まれる微生物の分析もしますが、IODPではもともとこの微生物研究は行われていませんでした。しかし、近年になってこれまでほとんど生物が存在しないと考えられてきた高温高圧の地下にも微生物が存在すること、深海噴出孔で硫化水素を食べて生活している細菌が発見され海底の生態系を形成していることが明らかになりました。
最初のころはコアから見つかる生物は採取中の混入と考えられていたのですが、地表の細菌混入がないように地下840mから採取された花崗岩からも細菌が見つかりました。この深さでも岩石には空隙があり、その中に含まれる地下水中に細菌が存在していたのです。
さらに、地表から地下に向って細菌が少なくなることもなく、どの深さでも大量の細菌がいることがわかりました。加えて、地下に住む細菌の総量は地表に生息する生物の総量に匹敵するとの試算まで出てきました。
これらの発見を受けて、生命は海面近くで誕生したのではなく、深海の、100℃以上の高温で酸素がない嫌気環境で化学細菌として生れたという説が広まってきています。このようなことから、IODPでも地下生物圏の研究が行われるようになってきました。p.181-2
ほへー