山岡光治『地形図を読む技術:すべての国土を正確に描いた基本図を活用する極意』

地形図を読む技術 (サイエンス・アイ新書)

地形図を読む技術 (サイエンス・アイ新書)

 文字通り、地図の読み方を伝授する本。手許でもって、チョコチョコ読み返すほうがいい類の書物かな。たくさんの実例を元に解説しているので、わかりやすい。こうしてみると、等高線から山の形を思い浮かべるとか、地形図を見て山のルートを想像するってのは、不得手なんだなとよくわかった。第三章の実際の町歩きや山歩きでどのように使うのかの実例や第四章の各地形ごとの特色の紹介も非常に興味深い。
 昨年刊行だけに、液状化や盛り土の崩落といった、地盤災害についても触れられているが、重機で地形を均して、挙句に名前も変えてしまう開発手法は危険だなあとしか。その場所が危険かどうか判断しにくくなってしまう。実際、災害に脆弱そうな開発が行なわれている場所は熊本市周辺でも良く見かけるしな。


 本書で一番印象的だったのは、2章の一番最初、「地形図を広げて「秋谷」を歩いてみる」かな。ほぼ同じ内容が、めぐるめぐる 地図測量散歩 その71:葉山秋谷で地図読み(距離約4.5km)に書かれているが、一見して山体崩壊の痕跡に見える。島原の眉山なんかを見慣れた目には、図内の「仲里」が崩れた土砂が積もったところで、井戸石は海中に流れこんだ土石の痕跡に見える。とすると、普通に人が住みまくっているのは危ういなあと。ざっと検索したところでは歴史時代以前に崩落したもののようだが、このあたり地盤災害を警告する地域指定があるから、安全な場所とは言い難いように思うが。

 検索をしていて知ったのだが、秋谷を含む横須賀市葉山町などの三浦半島は地すべりの危険の大きな土地なのだそうで。こういうところが、無造作に開発されていくのが怖いな。実際、リンクの下のを見ると、地すべりが起こって、あわてて対策が行なわれている場所がいくつも存在するわけで。つーか、現行法では地すべりの危険がある場所の開発を止められないのか…
葉山に住む人必読 「活断層、地すべり多発地帯の上」:葉山町インサイダー
横須賀・葉山地域における宅地開発と地すべり:土木学会 斜面工学小委員会 災害WG 巡検


 以下、メモ:

 このうち、国土地理院とその前身によって、明治初期に作成された迅速測図、仮製地形図(仮製図)は、その名が示すように、取り急ぎ作成したもので、全国的に統一して整備した基準点にもとづいていません。それでも地図の知識があれば、主要交通路や水系などを手がかりにして、並べて見ることは容易です。
 しかし、重ね合わせるとなると、たとえ同一縮尺の表示があったとしても、この間の経緯度原点数値の変更などのことから、経度緯度を基準にしただけでは厳密には一致しないでしょう。
 そうした場合は、パソコンのアプリケーションなどの力を借りて、地図上の転位が比較的少ないと思われる主要交通路や水系を基準にします。基準とする主要地物が存在しない場合には、主要な山頂および谷の交会地点などを使用して重ね合わせます。
 より正確に一致させるには、多少の拡大縮小だけでなく変形も必要になります。こうなると、『地図太郎』(東京カートグラフィック)など、少し高度なアプリケーションが必要になります。いずれにしても複数の地点で照合を試みて柔軟に対応します。p.114-5

 メモ。そういうソフトがあるのか。

 その経過を示すように、古文書などからは、約200年前までは天井川ではなかったことが確認されているといいます。従って、そのあとに天井川化が急激に進行したのでしょう。そのため氾濫の危険性は解消されずに、2002年には旧草津川の南に水路(現在の草津川)が建設されたのです。分水路といったものではなく、新しい河川の建設です。p191

 へえ、草津川って19世紀以前には天井川じゃなかったんだ。ということは18世紀後半から19世紀ににかけて上流での土地利用と植生に変化が起きたということだろうか。