小山真人『ドローンで迫る伊豆半島の衝突』

 帯状疱疹発症以来、どうも、体が重い。どうしても、寝る時間が長くなる。というか、今日は、朝の五時頃、パチッと目が覚めて、そのあと寝直したら、寝苦しくて寝苦しくて。睡眠時無呼吸症候群か何かかいな。なんか、ダムのある深い森の中の隠れ里を探して、なんかするようなお話だった。目覚めてみると、意味不明。ここのところ、「歴史的大規模土砂災害地点を歩く」を読んでいるせいか。


 で、さらに地学本。

ドローンで迫る 伊豆半島の衝突 (岩波科学ライブラリー)

ドローンで迫る 伊豆半島の衝突 (岩波科学ライブラリー)

 タイトルの通り、ドローンで伊豆半島近辺の地学的に特徴のある地形を空撮した本。四尾連湖が出てきて、ああ、そういえば、「ゆるキャン△」の舞台がドンピシャで、リンやなでしこがウロチョロしている場所が、まさに、伊豆半島衝突の影響を受けている場所なのだなあ、と。つーか、四尾連湖、不思議な地形だなと思っていたが、地すべり地形なのか。意外と、地すべりの土地に池ができる事例って、多いんだな。
 飛行機やヘリより低コスト。また、地表に近いところから俯瞰できて、地形が近距離で観察できるのが強みと。
 地理院地図の傾斜量図と比べながら見ると楽しい。


 「富士山の噴火と崩壊」、「伊豆半島の成長と衝突」、「荒ぶる火山帯」、「本州側の隆起と変容」の四章に、「ドローン撮影の威力」ということで熊本地震の被災地の空撮とイギリスの地質現象の空撮、さらに、ドローン撮影入門の構成。ドローン空撮って、機体の喪失や損傷を考えると、機体価格の数倍程度の費用が必要そうだなあ。予備バッテリーだの、記録媒体だのも、費用に加わるし。


 第一章は、富士山。富士山って、溶岩を出しまくって、あれだけ高くなったんだよなあ。貞観噴火に至る、冷え固まった溶岩の姿。明瞭に残る江戸時代の宝永噴火の火口。一方で、大沢崩れに代表される崩れる方向の動き。ここ1000年ほど、富士山って、山頂から溶岩出してないんだよなあ。そう考えると、これから先、ごっそり崩れる方向に天秤が向きそう。
 宝永噴火火口の壁面に、縦横無尽に走る岩脈が印象的。


 続いては、伊豆半島。東側が隆起して、西側が沈降。東側には、段丘が見られる。あとは、大室山に代表される、たくさんの火山。伊豆半島の東側の平坦地、たいがい、流れた溶岩でできてるんだよな。あんな感じの噴火が起きたら、大騒ぎになりそう。天城山が、「なぜか『鎮火』してしまった」というのも興味深い。


 第三章は、伊豆半島の衝突帯の火山。箱根山伊豆大島八ヶ岳
 八ヶ岳の山体崩壊がビビる。20数万年前に、100億立方メートルが崩れて、甲府盆地を埋め尽くした。韮崎で、厚さ50メートルとか、ちょっと何言ってるかわからないレベル。しかも、崩れた跡は、その後の火山活動で完全に埋まってるとか、地球やばい。
 その4パーセント弱、3.5億立方メートルが崩れた887年の大月川岩屑なだれも、千曲川沿いの平安時代の遺跡を埋めまくっている大災害なんだよなあ。


 最後は、本州側の隆起とそれに伴う土砂の移動。年平均5ミリづつ隆起を続けている。で、隆起した山は浸食されて、土砂を供給。それが、砂州となって、いろいろな景観を作る。
 日本平など、太平洋岸の丘陵も、隆起の産物。幕末の東海地震で隆起して、海岸沿いに平地ができた薩垂峠。次の南海トラフ地震で、津波食らって、東西交通がマヒしそう…
 1707年の南海トラフ地震で起きた大谷崩れや白鳥山の崩落。隆起した山は、今度は、地震や水害で派手に崩壊する。


 熊本地震阿蘇近辺の崩落風景や地割れ、そして、イギリスの空撮写真。スコットランド、スタッファ島の柱状節理がすげえ。