山崎晴雄・久保純子『日本列島100万年史:大地に刻まれた壮大な物語』

 ここのところ、ブルーバックス、地学関係の本が多いような気がする。何冊か購入したうちの一冊。題名から、日本列島全体の動きを追った本かと思ったら、おおまかに北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州と地域を分けた、それぞれの地域の大きな地形を紹介する話。つーか、九州が少なすぎるんですけど…
 山脈とか平野とかの大きな構造は、基本的には、海洋プレートの沈み込む角度に左右されるという理解でいいのかな。プレート境界と平行の東北地方では、南北にまっすぐな構造になる。一方で、プレートが斜めに沈み込んでいる中部から西側や知床半島から千島列島では、低地と高地が互い違いに発達する地形になると。
 海溝が、地形の生成に大きな影響を与えている。付加体による隆起。外弧リッジ、外弧平坦面、外弧隆起面、中央沈降帯、火山フロント。あるいは、伊豆半島の衝突による地形の変動。
 フォッサマグナは日本列島が開いたときにできた沈降帯だったということは、1000万年前あたりには、海だったということかな。で、それが火山で埋まったと。
 氷河期による海進、海退が引き起こす変動も興味深い。というか、現在の沖積平野って、本当に最近できたものなんだな。


 最初の総説に続いて、二章以降は、各地域の実例。
 平野部って、基本的には沈降帯なんだな。関東平野は、伊豆半島でプレート境界が陸地に近づいたためにできた前弧海盆なのだそうで。中部から中国地方にかけては、東海湖盆、古琵琶湖湖盆、大阪湖盆、さらに播磨灘、燧灘と、沈降地形が続く。瀬戸内海は中央低地と。
 あとは、石狩平野の泥炭や縄文海進によって海だった土地が、その後海退によって平野化、砂丘が並んだ青森の諸平野など。石狩川って、元は太平洋に流れていたのが、支笏火山の噴出物によって、行き先ををふさがれて、日本海側に流れるようになったそうで。壮大な話。
 小田原などがある足柄平野はプレート沈み込みの境界が、富士山の山体崩壊による御殿場泥流で埋め立てられたという、なかなか凄まじい地形らしい。
 島根や鳥取に関しては、近世のたたら製鉄の原料調達のためのかんな流しで、大量の砂が供給されて、砂嘴が発達した次第を紹介。


 氷河期の氷河地形氷河時代になんかした北方系の動植物が生き残る高地の状況が、北海道の大雪山日本アルプスで紹介される。
 あるいは、複数の火山が埋め立てられてできた富士山や箱根山


 三陸リアス式海岸が、海退期にできた谷が、海進によって、水中になったという組成であるという話。あるいは、南海トラフにともなう岬と海盆が交差する地形の話。阪神大震災の「震災の帯」が、地盤が弱かったからではなく、基盤岩と堆積層による「焦点効果」によって、ゆれが増幅されたからという話なども興味深い。


 九州に関しては、鹿児島湾周辺の火山がメイン。シラスの堆積の仕方とか、鹿児島湾がカルデラによって作られているとか、超巨大火砕流のメカニズムとか。結局のところ、南九州の巨大カルデラ火山は、今後も破局噴火を起こしうるのか、それとも、条件が変わって起きないのかは気になるな。
 そういえば、阿蘇山の地下のマグマ溜まりは、熊本地震地震はなんかで規模が推定できたりしないのかな。阿蘇の地下に、破局噴火を起こしうるマグマ溜まりがあるのか、ないのかは気になる。


 以下、メモ:

 足柄平野にも縄文時代にはすでに人が住んでいたと考えられますが、そのころの遺跡は御殿場泥流が埋めてしまったため見つけることはできません。今はその上に街があるわけです。ただ、大規模な噴火ではありましたが、泥流はじわじわと堆積していったはずなので、平野に住んでいた縄文人は他の地域へと逃げることができたと思います。泥流とは水と砂や泥が混じったもので、岩など重いものを浮かせて下流まで流す力がありますが、足柄平野付近は、一度上流に堆積した泥流堆積物が洗い出されて再堆積した二次堆積物です。洪水のたびに少しずつ堆積していったと考えられます。p.162

 富士山が山体崩壊を起こしたら、小田原まで一気に埋まると思っていたが、そこまではないのか。それにしても、大災害になることは間違いないだろうけど。
 つーか、山体崩壊の傷跡を、溶岩で埋めてしまったってのがすごいな。

 南九州でも、78万年前以降にそのような地殻変動があって、プレートにかかる力が変化し、噴火が活発化したのかもしれません。考えられる理由のひとつとしては、80万年前〜60万年前頃、西南日本の下に沈み込むフィリピン海プレートの進行方向が、北北西から西北西にかわったことが挙げられます。しかし、これがカルデラ形成とどのように関連しているのかは充分説明できていません。p.255

 これ、現在も続いているメカニズムなのかね…