加藤寛一郎『まさかの墜落』

まさかの墜落

まさかの墜落

 一昨日の航空機事故の記事を読んで、気になったので航空機事故本連射。一つ目はこれ。1996年以降に起きた重大事故をとり上げている。この時期に、航空関係者が「まさか」と思うような不可解な航空機事故が起きるようになり、新しい事故の傾向が起きつつあるのではないかと著者は懸念している。結局、出版後10年ほどたつけど、評価はどうなんだろうか。Wikipediaあたりの航空機事故の一覧を見ると、顕著に変化しているようには見えないが。ただ、本書で扱われたような事故が繰り返している感じも。
 本書は前半は「人が設計する怖さ」、後半は「人が操縦する怖さ」ということで、前半は設計の問題や地上での整備が大きな事故につながった事例を。後半はパイロットのエラーによる事例を主体にしている。なんというか、読んでいて、人間の認識力の限界というか、緊急事態になるといろいろと抜け落ちるんだなと。あと、細かい設計の問題や表現の行き違いが巡り巡って、何百人もの人を死なせることになる。燃料タンクの爆発とか、電気機器のショートが断熱材に引火とか、水平安定板の固着とか。あと、与圧ができなくて乗員全員気絶で墜落と言う事例が紹介されているが、これはその後もちょくちょく起きているような気がする。機長と副操縦士の間での、コミュニケーションの行き違いが墜落を招いている事例も。あとは、空中衝突の危険があるとき、管制官の指示と衝突防止装置の支持のどっちを優先するかとか。駿河湾の衝突未遂はいかに運がよかったか。ドイツの空中衝突との違いは日中か夜間だったかの差しかないような。
 あと、地上の整備のいい加減な処置が重大な結果を生んだ事例とか。エンジン交換の際、外したエンジンが改修済みで、取替え用のエンジンが改修未了。で、パイプ類が合わないから、改修済みのエンジンから油圧パイプなどを持ってきて装着。しかし、飛行中にパイプが接触して燃料漏れ。上空で燃料がなくなって、エンジンストップ、滑空で空港に緊急着陸とか、怖すぎる。後から見れば、漏れているエンジンを止めて片発で飛べば充分安全に着陸できたはずなんだけど、機上の乗員にはどこがまずいのか分からない。しかも、反対側のエンジンの方が危なそうに見えると。これはどうしようもないよなあ。