『鉱山をゆく』

鉱山をゆく (日本には“宝

鉱山をゆく (日本には“宝"があふれている!)

 5冊目。今回のテーマは鉱山。社会科見学・土木系と廃系が同居したような、「ゆく」シリーズとしては、おもしろい編集の本。構成としては、現役の鉱山の実地取材、今後有望な資源の話、鉱山の基礎知識、鉱物採集趣味、産業遺産・廃墟として操業をやめた鉱山の話から成っている。


 最初は現役鉱山の話。石灰岩が豊富で、露天掘りができる石灰岩はともかくとして、他の鉱物は採算が取れる場所でしか採掘が行なわれていないんだな。金含有率が非常に高い菱刈鉱山、炭層が比較的平坦で機械掘りに適した釧路コールマイン南関東ガス田など。ここのところの原油安で、北海道の勇払や新潟の岩船沖の油ガス田の採算は大丈夫なのだろうか。菱刈金山は1980年以降と、比較的最近の操業にも関わらず、産金量は日本一になっているのだとか。すごいな。あと、釧路コールマイン、使い終わった切羽はそのまま潰すのか。
 金属や化石燃料以外のマイナーな資源の鉱山も興味深い。かつてはマンガン鉱山で、現在は過去に掘り出したバラ輝石を研磨してマリンローズ野田玉川鉱山、化粧品の原料になるセリサイトを採掘する鍋山鉱山、消臭剤や家畜のミネラル補給に使われるリモナイト(沼鉄鉱)を採掘する第一阿蘇鉱山、土壌改良剤などに使われるゼオライトを産出する石見鉱山など。第一阿蘇鉱山は行ったことあるな。赤い土に葦の化石が混ざったの。まだ持ってるかも。いろいろな利用法があるのだな。
[番外編]鉱山をゆく−国内最大のセリサイト埋蔵をほこる土橋鉱山(前編) - 写真でめぐる世界のゴールド - GOLDNEWS(ゴールドニュース)- 金・ゴールドに関する情報サイト
[番外編]鉱山をゆく−国内最大のセリサイト埋蔵をほこる土橋鉱山(後編) - 写真でめぐる世界のゴールド - GOLDNEWS(ゴールドニュース)- 金・ゴールドに関する情報サイト
 有望資源に関しては、都市鉱山や海底資源の話。


 第二章は、鉱山の歴史や基礎知識など。先史時代から現在までの、鉱山史の年表がすごい。確かに、石器時代のサヌカイトや黒曜石採掘も鉱山だわな。あとは、ベンガラとか。あと、鉱山最盛期の繁栄のさまを、夕張、小坂、足尾、筑豊軍艦島を例に紹介。このあたりは、当時としては最先端の都市インフラが整備され、観光客が集まったのだとか。
 第三章は鉱物採集趣味の話。木津川はいろいろと小さな鉱物が採集できるのだとか。体験談がいくつか。しかし、埋蔵金の話は苦笑するしかないな。そもそも、そんな金があったら、借金の返済に使っているだろう。帰雲城は膨大な土砂で押しつぶされているだろう。土砂の除去で赤字になると思う。


 ラストは、操業をやめた後の鉱山の話。観光施設として開放されている鉱山跡のリスト。真っ赤に染まった日本弁柄工業・矢田工場、炭酸カルシウムで真っ白に染まった白石工業・桑名工場、選鉱機材が並ぶ日本クローム工業・若松鉱山が印象的。北海道や九州の炭鉱遺産の探訪記事も良い。つい最近まで現役だった池島がおもしろそう。

 岩手県釜石市にある釜石鉱山は、鉄鉱石を主な産出資源とし、1857(安政4)年に本格的な開発が始まった。1993(平成5)年に大規模採掘が終了し、現在は、年間約100tの鉄鉱石が採掘されているのみだ。これらは私鉄のブレーキシューや浄水器のろ過材として使用されている。p.95

 へえ、鉄鉱石ってそういう使い道があるんだ。釜石鉱山では、今はミネラルウォーターの生産が行われているとか言うし、鉄鉱石のろ過能力すごいんだな。