『貨物列車をゆく』

 6冊目。以前に出た『貨物をゆく』の続編的なものかな。貨物輸送のなかでも、貨物列車に焦点を合わせた本。
 隅田川貨物駅やこのほど廃止された梅田貨物駅、震災瓦礫や甲種輸送などの輸送、検査場や製造現場・ダイヤの組み方などのオペレーション、基礎知識で歴史や貨車一覧など。最後に、「続・貨物にまつわるエトセトラ」では、貨物列車にとどまらないさまざまな輸送に関わる話。
 日常的な行動範囲からは見えにくい貨物列車の世界を、さくっと知るには良い本。コンテナヤードでは架線を設けられないから、入れ替え用にディーゼルないしハイブリッドの機関車が必要なのか。あるいは、いったん留め置き線に入れてから、改めて積み下ろしのホームに移動させるとか。最近は、コンテナがほとんどなんだな。
 第一章「JR貨物が運ぶ!」は特定の輸送事例として、鉄道車両の輸送や震災瓦礫、内陸部への石油の輸送、宅急便など、さまざまな輸送事例を紹介。瓦礫輸送のために専用コンテナを新造したり、専用列車を仕立てたり。内陸部のオイルターミナルには、鉄道が一番マシなのかね。本当はパイプラインが一番なんだろうけど。タンクローリーなんかで運んでたらやってられないわな。
 第二章は貨物鉄道の運営。機関車や貨車の点検、製造工場の話、貨物駅での機関車の動き、ダイヤの組み方など。高速貨物列車の優先度は比較的高いけど、通勤列車や特急とは競合すると。独立した企業である臨海鉄道も興味深いな。
 第三章は基礎知識編。鉄道による貨物輸送が衰退したのって、意外と最近なんだな。石炭なんかのバラ積み輸送がなくなったが痛手だったと。
 第四章は、鉄道以外も。赤川鉄橋の歩道廃止や大東島のサトウキビ集荷用の軽便鉄道クロネコヤマト羽田クロノゲート血液製剤の輸送など。ヤマト運輸は、物流だけではなく、物流と関わるサービスにも手を伸ばそうとしているわけか。あと、献血された血液を検査して、血液製剤に加工、さらに必要な病院に送る動きも興味深いな。成分ごとに分けられて、血小板は保存期間4日。他の血漿赤血球はもう少し長くなる。あと、白血球は邪魔者として排除か。「貨物デート」は誰得だな。


 最後に、かつては、鉄道と水運の関係が密接で、鉄道駅内に水路が引き込まれていたという話。地理院地図で古い航空写真と見比べるとおもしろい。ただ、航空写真のカバー範囲が狭いのが欠点か。梅田貨物駅も、戦後すぐには掘割が入っていたのが、ガンガン埋めたてられる。さらに、敷地も削られ、最後は廃止される流れがわかる。古い航空写真をみると、昔は駅って広かったんだよな。だんだん狭くなる。梅小路の貨物駅なんかも。