岡部いさく『クルマが先か? ヒコーキが先か? Mk.4』

クルマが先か?ヒコーキが先か?〈Mk.4〉

クルマが先か?ヒコーキが先か?〈Mk.4〉

 今回は、「初心に戻って」とあるように航空機のメーカーが自動車を作った話をメインに、自動車と飛行機の両方にまたがるような話、奇抜なアイデア、自動車の変り種動力の話など。
 飛行機と自動車、両方でものになったメーカーって少ないな。サーブの場合、飛行機も自動車も市場が小さいスウェーデンの特殊事情って感じだしな。二番目と三番目は、メッサーシュミットとハインケル。どちらも、戦後、バブルカーを作っているのが興味深い。本格的な自動車を作るのはハードルが高かったってことなのかね。どっちのバブルカーもキュートでいいと思うが。ハインケルの方が売れたことになるのかね。まあ、イセッタが両者を圧倒する販売数のようだが。
F・M・R・ メッサーシュミット KR200
Messerschmitt KR200 - Wikipedia, the free encyclopedia
ハインケル・カビーネ - Wikipedia
イソ・イセッタ - Wikipedia
BMW・イセッタ - Wikipedia
バブルカー - Wikipedia


 戦前、レースカーで一世を風靡したハリー・A・ミラーの話も興味深い。
 次の第13章は、自動車と飛行機の交錯。自動車にジェットエンジン積んでみたり、軽飛行機で有名なビーチクラフトが試作した自動車の話、自動車にも飛行機にも使える乗り物をめぐる試行錯誤とか。
 空も飛べる自動車って、飛行機の時には自動車の要素が邪魔になるし、地上を走ると翼が邪魔だし、どうしても中途半端になるよなあ。STOL性能の高い軽飛行機に折りたたみのスクーターでも積んだほうがいいんじゃねって感じで。
 実際に、空地両用の乗り物を作ったイタリアの航空機設計者ルイジ・ペラリーニの話がおもしろいな。何種類か、実際に作っているのがすごい。プロペラで推進するから、自動車としては欠陥だらけ。結局、自動車として承認されなかったあたりが限界なんだろうけど。飛行機としては、型式証明を得られているってのは、結構完成度高いんじゃね。最終的に、ペラリーニはオーストラリアに渡って、そこで農業機PL-12エアトラックを設計して、それなりに成功したようだ。しかし、ネット上では、日本語の情報が少ないな。蛇乃目伍長の「エアフォースの英国面に来い!」 Mk.2 Transavia PL-12 Airtrukとその系譜か。こういう飛行機大好きです。クルマ飛行機のほうは情報なし。


 第14章は「夢とロマンの果てに」というタイトルで、いろいろと挑戦的なことをやった人たちを紹介。やっぱり、冒頭のダイマクション・カーのインパクトが全てだよなあ。個人的にはこういうの大好きだけど、安定は悪そうだよな。設計者のフラーは、飛行機も構想していたとか。『流線型シンドローム』という本があって、読もうと思いつつ、のびのびになっていたり。
 他は、プロペラ自動車を構想したマルセル・レヤ、フランス製高級車を作ったジャン・ダニノの話など。
ダイマクション・カー - Wikipedia プラモ欲しい。


 最後の15章は変わった動力の飛行機や自動車をメインに。
 蒸気レシプロ機関で飛んだ飛行機があるってのに驚愕。タービンじゃないのか。あと、蒸気タービンで速度記録に挑もうという、「ブリティッシュ・スティームカー・チャレンジ」とか。
 アメリカ大統領の専用自動車の最初が電気自動車であった話から、エアフォース1やドゥームズデイ・ジェット。今どきの専用車は、保安上の理由から退役したらスクラップなんだそうで。つーか、今どきの大統領専用車って、なまじっかな装甲車より装甲強いんじゃね。追加装甲なしでRPG耐弾って、戦車でもないような。まあ、その分、走行性能はお察しというものらしいけど。
 オペルの創業者アダム・オペルの孫フリッツ・オペルのロケット道楽もすごいな。自動車にグライダー、鉄道と、なんでもロケットを取り付けてぶっ飛ばして見せたという。金持ちのボンボンがマッドな道にひた走るというか。
 ロケットとジェットエンジンで、音速を超える自動車を作ろうという野望。ブラッドハウンドSSCって、乗るのも怖いな。
 ハイブリッド機関の先駆者である潜水艦の話とか。まあ、でかいから何とかなるんだよな。車に積むとなれば、バッテリーをいかにコンパクトに安くするかが課題と。
ベスラー・スチーム・エアプレーン - Wikipedia
実在した「スチームエンジン飛行機」: 機械が君臨していた時代の美学
蒸気自動車で世界新記録樹立: ブリティッシュ・スチームカー : F1通信
史上初の時速1600キロ超を目指す「Bloodhound SSC」が2015年に挑戦予定 - GIGAZINE