谷甲州『航空宇宙軍史:惑星CB-8越冬隊』

惑星CB-8越冬隊 (ハヤカワ文庫)

惑星CB-8越冬隊 (ハヤカワ文庫)

 「航空宇宙軍史」読みたおし、一冊目。「航空宇宙軍史」の中でも、異色の作品で、実はあまり再読していなかった作品なのだが、改めて読むとむちゃくちゃおもしろいな。遠い未来の異星で、極地探検の冒険小説。
 楕円軌道をとり、南極を太陽に向けた惑星、CB-8。極寒の北極に、惑星開発のために調査隊が入り、北極点で越冬を試みる。しかし、この惑星は、季節ごとに巨大な地殻変動を起こす惑星だった。急激に高度が上昇し、酸素が不足する基地。主人公以下の実務部隊は、越冬基地を追い出され、前進基地に向かうも、航空機の着陸失敗で多くの犠牲者を出す。さらに、発電衛星のエネルギー照射が、地殻変動で照準を狂わせ、極点基地を直撃、資材を全損させる可能性がでてきた。
 主人公たちは、厳寒のなか、6000キロの氷海を突破し、今や極端に大気が薄くなった極点まで踏破しなければならなくなった。クレバスや崖、氷塊を、ホバークラフトタイプの「スノークルーザー」で突破。さらに、断崖を登攀。その間に、次々と同行者たちは力尽きていく。よく考えると、地球人と汎銀河人、合わせて60人以上いたのが、物語終了時点での生存者が10人強か。極点基地まで踏破を試みた人間の中では、6人中明確に生き残ったのは一人。可能性があるのが一人というのも恐ろしい。結局、主人公も、死亡確実だし。


 「航空宇宙軍史」全体を通して影響を与えているらしき、「ムルキラ」。あるいは、航空宇宙軍が最終的に、敗北して、地球文明が汎銀河文明に敗れ去るという結末も予告される。