谷甲州『航空宇宙軍史:終わりなき索敵』

終わりなき索敵〈上〉 [航空宇宙軍史] (ハヤカワ文庫JA 569)

終わりなき索敵〈上〉 [航空宇宙軍史] (ハヤカワ文庫JA 569)

 「旧」航空宇宙軍史の最終巻。航空宇宙軍史のフレームワークを示す話。前巻に出てきたロックウッド少佐と作業体Kが、再登場。ロックウッド少佐は中佐に昇進し、外宇宙観測艦ユリシーズの艦長として、「射手座重力波源」(SG)に赴く。作業体Kはその「員数外」の乗員として搭乗し、ユリシーズの危機に、SGへの片道航海へ出かける。
 航空宇宙軍史って、ループものの性質が強いんだな。決戦に敗れた航空宇宙軍の艦隊の指揮官が、過去に向かって、情報を乗せた重力波源を送り出す。しかし、実際には、「起こったこと」の辻褄を合わせるように、「現実」が変化していく。
 しかしまあ、未来からの「情報」を元に、無理やり、戦うために外宇宙探査を続ける航空宇宙軍って、背筋が凍るような存在だな。中枢に立っている人間は、何を思ってそういう組織を指揮したのだろう。そして、汎銀河人と航空宇宙軍の数百年に及ぶ戦争。航空宇宙軍は地球を攻められ、敗戦。地球から地球人は追放され、最後は名もない氷の星になってしまう。なんつーか、諸行無常感が。
 あと、ロックウッド中佐→中将が、歴史上の重要な事件の現場に次々と行き当たるのもすごいな。最終的には、SGに呑まれた作業体K、ジョー・シマザキ、ロックウッド中将が邂逅を果たし、さらに外を目指すって感じか。
 ジョー・シマザキ/作業体Kの情報が、ばら撒かれて汎銀河人が出現。さらに、ジョー・シマザキとヴィシュヌ、人類は、他の存在との接触・戦いを求め、「終わりなき索敵」を続ける。
 うーむ、わかったようで全然分かってないな。