デヴィッド・R・ヒギンズ『ティーガー2vsIS-2スターリン戦車:東部戦線1945』

ティーガー2vsIS‐2スターリン戦車東部戦線1945 (オスプレイ“対決”シリーズ)

ティーガー2vsIS‐2スターリン戦車東部戦線1945 (オスプレイ“対決”シリーズ)

 末期戦線のドイツ軍。ベルリン戦直前、ポンメルンでの戦いでティーガー2がどのように活躍したかを描く。しかし、「対決」シリーズといいながら、全然対決していないような。そもそも、IS-2は「突破戦車」で、あんまり対戦車戦闘を考慮していないのかもな。発射速度が遅いとか、弾薬搭載量が28発とすくないとか、徹甲弾は8発しか積んでないとか。積極的に戦車を狩る戦車じゃなさそう。
 ティーガー2は、単体としては、やはりすごいな。末期戦の中、数両で、戦線を押し上げたり、ガッチリ守ったり。近くに居れば、この上もなく頼もしい戦車なのは確かだろう。つーか、「戦闘中に車体正面の傾斜装甲を貫通されたという戦闘事例は見当たらない」(p.72)ってのが、凄まじい。さすが、「王」の名を冠するものとしか。
 まあ、ティーガー2の生産量が500弱で、IS-2が4400両弱という格差が、すべてを物語っているような。もう、全然戦いにならない。そもそも、大戦中を通じて生産された、主力戦車である4号戦車の生産数と「重戦車」の生産数があまり変わらないというのがね。ドイツの戦時生産能力の低さを物語っている。


 戦闘に関しては、ポンメルンの都市アルンスウェルデをめぐる戦い。いったん、包囲され、その後、SS第11戦車軍による反撃「冬至作戦」でいったん、解囲。撤退するまでがメイン。この戦闘において、ティーガー2装備のSS第503重戦車大隊は、防御戦力の中心として活躍する。有利な地形に布陣して戦う限り、ティーガー2は無双できると。
 ソ連軍の「重戦車旅団」の所帯の小ささも印象的。ドイツの重戦車大隊の5割増程度の戦力しかない。一個戦車大隊に、二個歩兵中隊をくっつけた程度。「連隊」が21両ってのも。しかも、本書で紹介される第11親衛重戦車旅団は、消耗で、半減してるし。このあたり、国や時代によって、部隊の大きさがけっこう違うというのは、なかなか難しい問題だよな。

 こうして最終的には7つの関連工場を統合した第100戦車工場(チェリャビンスク重機械工業第100工場:ChZTM)が誕生する。重戦車を吊り上げ可能な大型クレーンを有する数少ない工場であり、1kmもの長さの製造ラインの上で戦車が組み立てられていた。また、主要製造ラインに併行して、適宜、補助用の組み立てラインを幹から伸びる枝のように敷設することができた。生産効率を最大限までに上げるために、労働者は常時、生産ラインでの担当場所が決められ、ひたすら単純作業を繰り返していた。工場群が組織された目的と、その桁外れの規模から、チェリャビンスク重機械工業第100工場は間もなく「タンコグラード(戦車の町)」と呼ばれるようになる。p.13

 正しく、大量生産の設備だな。