2013年の地震調査委員会による長期評価

 そもそも、地震の警告は行われていたわけだよな。
 布田川・日奈久断層帯が危険度の高い断層であることは、阪神大震災以降の断層研究の進展で知られていたし、大規模な地震になる可能性が高いことも分かっていた。しかし、そのような知識・情報が、一般の人まで広まっていなかった。行政なんかの、対策を行うべき組織も、準備ができていなかった。2013年には、ここまで明確な警告もなされていたわけだ。それにも関わらず、あちこちで不備を露呈してしまった。
 まあ、私自身、布田川断層帯の危険性を知りつつ、全く対策していなくて、部屋が物で埋まってしまったお間抜けさんなのだが。


 熊本・大分あたりは、18-27%って、南北の地域と比べても、圧倒的に確率が高かった。そして、その予測は見事に的中したと言えるのではなかろうか。
 しかしまあ、今回炸裂した阿蘇から益城あたりの区間の確率は、最大で0.9パーセントだったんだよな。それより圧倒的に発生確率が高く評価された日奈久断層帯が、今回の地震を受けて、どのように動くかが不安だ。隣の断層が動けば、影響されないわけはない。実際、宇土から八代にかけて、地震が活発化しているように見受けられるし。

「九州の大地震確率30〜42%:政府調査委長期評価見直し:今後30年M6・8以上:対象活断層17に倍増」『熊日新聞』13/2/2

 政府の地震調査委員会は1日、九州の活断層の長期評価を見直し、今後30年以内にマグニチュード(M)6・8以上の大地震が九州のどこかで起こる確率は、30〜42%と発表した。活断層で引き起こされる地震の発生確率を、九州全体で示すのは初めて。基準日は2013年1月1日。


 新たな長期評価では、対象とする活断層の長さを20キロ(M7の地震に相当)以上から15キロ(M6・8に相当)以上に引き下げるなど基準を拡大。この結果、詳細に評価した活断層は従来から倍増し、17となった。
 全体の発生確率に加え、地質構造を基に九州を3地域に分割し、それぞれの地域内に限定した場合の長期評価も行った。30年以内にM6・8以上の地震が起こる確率は、松山(愛媛)と伊万里(佐賀)付近を通る構造線より北側の「北部」で7〜13%、この構造線と大分と熊本を結ぶ構造線に挟まれた「中部」は18〜27%、「南部」は7〜18%だった。
 それぞれの地域で起こる最大級の地震はM8クラスと推定される。
 見直しに当たっては、「地域での危険度を理解するには、付近の活断層を総合的に評価する必要がある」として、大きな活断層だけではなく、長さ約10〜15キロの比較的小規模な活断層や、地表に痕跡が残らない場合の地震も考慮した上で確率計算に含めた。
 調査委は、M6・8だった新潟県中越地震で大きな被害が生じた反省などから10年に評価方法の見直しを決め、検討を進めていた。順次見直しを進め、次は関東地方の評価をまとめる。
 地域全体での地震の動きをまとめた今回の評価にっいて、本蔵義守委員長は「適切に防災に役立てるようにしてほしい」と話している。


県内は4断層最大16%
 政府の地震調査研究推進本部がまとめた活断層長期評価は、県内では4断層が対象。このうち、布田川断層帯と日奈久断層帯が同時に活動した場合、最大でマグニチュード(M)7・8〜8・2程度の地震が起こる可能性があるとした。
 布田川と日奈久両断層帯は、全国有数規模の活断層帯。前回(2002年)の長期評価では布田川・日奈久断層帯として一括評価していたが、今回から分割して評価した。
 布田川断層帯(南阿蘇村−上天草市、約66キロ)のうち、布田川区間で今後30年以内にM6・8以上の地震が発生する確率は最大0・9%。最近の調査で確認された宇土区間宇土半島北岸区間は、過去の活動実績が不明で推計できなかった。
 一方、日奈久断層帯益城町-八代海南部、約86キロ)での発生確率は日奈久区間が最大6%、八代海区間が同16%だった。
 人吉盆地南縁断層(湯前町人吉市東部、約22キロ)の発生確率は1%以下だった。今回から長期評価の対象となった緑川断層帯山都町美里町、約34キロ)の発生確率は推計されていない。      (渡辺哲也


「政府 活断層を総合評価:M6.8 九州32〜43%:30年以内」『朝日新聞』13/1/11

 政府の地震調査研究推進本部は、活断層が起こす地震の予測について、個々の活断層ごとに評価するこれまでの手法を見直し、地域単位で複数の活断層を総合的に評価する。対象の活断層も増やす。まず九州地方について試算し、評価案をまとめた。正式な数値は専門家の意見を聴いて決定し、今月中にも公表する。
 地震本部はこれまで全国110の活断層について調べていた。地表の長さ20キロ以上の活断層が対象。マグニチュード(M)7・0以上の地震を起こすおそれのある断層だった。しかし、2004年の新潟県中越地震(M6・8)のようにM7・0未満の地震でも大きな被害が発生した。活断層は長いほど地震の規模は大きくなるが、地下にもぐり地表からでは長さがはっきり分からなかった断層もある。
 そこで地震本部は、M6・8以上の地震が起きる可能性のある長さ20キロより短い活断層を対象に加え、地下の断層の長さも推定。さらに「住民に分かりやすく伝えるためには、周りの活断層を含めた総合的な評価が必要」として、地域単位で評価することにした。
 九州地方は活断層の分布などで3地域に分けた。30年以内にM6・8以上の地震が起きる確率は九州北部(福岡、大分、佐賀3県北部)は7〜13%、九州中部 (大分県中部と福岡、佐賀両県南部、長崎県、熊本両県北部)は18〜27%、九州南部(大分、長崎、熊本3県南部、宮崎、鹿児島両県)は8〜19%。九州全体では32〜43%となった。
 評価案では「地表に痕跡のない断層を見落としている可能性は否定できない」としており、確率が低い地域でも大きな地震に襲われる可能性がある。
 活断層の評価結果は、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率を示した「全国地震動予測地図」の基礎データとなる。新たな評価結果は、国や自治体の防災計画の見直しにも影響を与えそうだ。(杉本崇)