「うちのイチ押し:澤村農場(宇城市不知火町):海のとまとジュース:糖度高く後味は軽やか」『朝日新聞』09/6/3

 一本2000円か。

 鮮やかな朱色の果汁を口に含んだ。ねっとりとした舌触りの後、トマトの酸味と甘さが口いっぱいに広がる。ふだん口にするトマトジュースより濃いのに、後味はすっと消えるように軽い。
 原料は、八代海沿岸のかつて塩田などがあった干拓地で栽培された塩トマト。八代地域農業協同組合(JAやつしろ)によると、塩トマトは海の塩分やミネラルが豊富に残る土壌で育つため、小ぶりで皮は硬いが、糖度は高い。高級品として珍重されるという。
 塩トマトをジュースにして「海のとまと」と名付けたのは、宇城市不知火町で有機農法に取り組む「澤村農場」の澤村輝彦さん(49)。熟しすぎたり、形が悪くなったりし
て出荷できないトマトを再利用しようと、3年前に考案した。「魂を込めて育てた作物は簡単に捨てられない。そのままで出荷できないなら、安全でうまいジュースにしようと思った」という。
 ジュースは加工場で手作りする。水洗いしたトマトをつぶし、釜で煮込む。機械で種と皮を分離し、果汁だけにして再び煮込む。瓶に詰めて熱湯で消毒すれば完成。トマト60〜70キロから500ミリリットル入りの瓶が約90本できる。
 「海のとまと」は500ミリリットル瓶1本約2千円と少々値が張る。姉妹品の「百年とまと」「塩田とまと」とともに宇城市の農業振興施設「アグリパーク豊野」などで売っている。問い合わせは澤村さん(0964・33・7240)へ。     (岩崎生之助)