HONZから書評メモ

埋もれた歴史の謎を解く『漂流の島 江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』 - HONZ

 頻繁に漂流者が来て、生活資材や生き延び方を記した板などが残されていたという話が興味深い。
 アホウドリの保護のため、立ち入りや調査が制限されているなか、土木作業員としてもぐりこんだり、気象台の駐在員から話を聞いたりと、粘り強く調査を進めていく。歴史的調査も重要だと思うのだがな。
 江戸時代の漂流者、アホウドリ採取にやって来た男たち、戦時中の兵士、気象庁の観測員、アホウドリの保護調査や火山研究に通う研究者。さまざまな歴史があるか。

[本]『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』解説 by 岸 由二 - HONZ

 まあ、「生態系」というのは、動態的なものなのは確か。静態的理解や潜在植生といった概念が当を得ていないと。外来種排除が、時代遅れのものを指摘する本か。よく調べると、ある地域に存在する生物のかなりの部分が、多かれ少なかれ外来種的と。
 しかし、後半は、なんか微妙なような…
 たしかに、『見えない脅威“国内外来魚”:どう守る地域の生物多様性』の地域個体群の保護が、なんか、それはそれで何の意味があるんだろう的な感覚を憶えたのと通じるところがあるのかな。
 最後に紹介された事例は、ちょっと悩ましいところもあるが。同じ流域で、まったく違う個体群と理解するのも、どうかなと思う。つーか、「絶滅させたほうがいい」と言い出した時点で、なんか、もう「保全」もへったくれもないような。

[本]『風土記の世界』 - HONZ

 神話の提出が、服属の証しか。そして、地域性が豊からしい。
 本来、中国と同じように紀・志・列伝構成の正史を作りたかったが、結局形になったのは紀のみだったと。

[本]『ジハーディ・ジョンの生涯』テロへの恐怖が、新たなテロリストを生み出す - HONZ

 大学で、悪い連中に引き込まれるというのは、ありがちなパターンだな。イスラム原理主義者の活動の場で、友人がテロに関わるとなれば、そりゃ、マークされるよなあ。で、海外渡航が制限されて、就職や結婚の機会を逃す。それが、本人をテロリストの方向に動かす。絵に描いたような悪循環。
 テロリストの疑いをかけられると、テロリストとして生きるしかないようにされてしまうか…
 難しい話だな。

[本]『ザ・パーフェクト 日本初の恐竜全身骨格発掘記』 完璧な化石をめぐる完璧な物語 - HONZ

 途中経過が、意外と話題にならなかった感じだよなあ。ある程度、目処が立つまで発表されなかったと。
 まあ、化石の発掘って、だいたいこういう「奇跡」が基本なんだよな。日本のようなボーンベッドができにくいところでは。

[本]『喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日』解説 by 中原 圭介 - HONZ

 国有企業の巨万の富を横領した、共産党の高級幹部の底なしの腐敗。それらが、タックスヘイブンなどを通じて、隠され、国外に持ち出される。そのような、腐敗収奪システムが、アフリカの天然資源産出国に輸出されていると。
 旧宗主国の資源企業による汚職ネットワークから、中国産の手の込んだ資産隠しのノウハウへ。そこから得られる利益で、欧米の資源メジャーに対抗するレベルの資源企業が出現していると。
 そして、天然資源からの収益は独裁者の懐に転がり込み、教育や公衆衛生の予算は低下の一方と。なんか、どうしようもないな。
 中国による資源開発・インフラ投資は、むしろ中国製品の流入を促進し、地元の産業を破壊している。さらに、インフラや資源開発が地元の雇用を生んでいない。もう、なんか、19世紀の帝国主義の再生産だな。

[本]『箸はすごい』身近すぎて知られていない二本の魅力 - HONZ

 中国人ないし、中国系の人の著作のようだな。
 最初は匙の補助だったのが、だんだんと食事道具の主役になっていく流れ。肉食と小麦粉の料理が、箸の普及に大きかったそうだが、どういうことだろう。
 日本には比較的遅く入ったとか。

[本]ダウントン・アビーよりすごい? 波瀾万丈の群像劇『評伝 ウィリアム・モリス』 - HONZ

 京都で行われた展示会の図録は持ってるなあ。
 モリスとロセッティとジェイン、さらに広がる泥沼の人間関係。うーむ。アーツ・アンド・クラフツの裏側。

[本]史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス?想像力の帝国?』 - HONZ

 こうやって、歴史として整理・総括される時代になってきたわけか。
 ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズをデザインした男の伝記。のめりこんで、のめりこんで、供給側に移った人と。自分の子供をテストプレイヤーにしたのか。
 娘の彼氏をゲームに引き込んで、分かれた後も、プレイヤー仲間って、なんかすごいなw