『丸』2016/12号

丸 2016年 12 月号 [雑誌]

丸 2016年 12 月号 [雑誌]

 これも、買って、途中まで読んで放り出していたもの。
 特集は、日本の偵察機。大戦中の九七式司偵、一〇〇式司偵、彩雲、二式艦偵、水上機各種、景雲、それに戦後の自衛隊偵察機についての記事が並ぶ。
 満州事変によって、ソ連と勢力圏が直接接触日本海岸の航空基地からの、本土爆撃が脅威になってきた。これに対し、緒戦で航空撃滅戦を仕掛けることで対処することにし、その目として、司令部偵察機が必要になった。そのために、専用偵察機が開発されたと。九七式司偵の試作の段階では、構想が熟していなくて、実験機・高速連絡機という扱いだった。それが、昭和12年の研究方針で司令部偵察機になったと。
 一〇〇式司偵のスピードと航続距離に絞った要求が、要求どおりの性能を出した数少ない航空機にしたと。エンジン選定の理由が、ハ26には、二速過給器をつけた改良型が出る予定があったため。そのハ102を装備した二型が本命であった。そして、新型機の出現に対応して、スピードを上げた三型。こちらも、排気タービンを装備する四型が本命であった。
 三本目は、海軍の艦上偵察機「彩雲」の話。海軍でも、もともと、高速偵察機は求められていなかった。艦隊は、十分な艦上戦闘機を確保できず、低速の偵察機で充分であるという見通しがあった。しかし、日中戦争で、戦闘機の迎撃に苦しめられ、高速偵察機が必要になった。最初は、彗星の試作機を「二式艦偵」として導入。昭和17年から、開発を開始。減速装置を装着した「誉」22型とそれに対応したプロペラで650キロの時速を達成する予定だったが、ものにならず「誉」21型を装着したスペックダウン機が量産された。しかし、主な敵であるグラマンF6Fが比較的遅い戦闘機であったため、辛うじて、強行偵察が可能になった。スペックダウンをしのんで、「間に合った」と。
 野心的な高性能艦爆「彗星」の試作機を、偵察機に振り替えたのが「二式艦偵」。艦爆は、なかなかものにならず、むしろ、偵察機として活躍。昭和18年以降、基地航空隊の偵察部隊に供給。なかなかものにならなかった液冷型が、艦爆偵察機として、空冷型が基地航空隊に配備されたと。
 自衛隊偵察機、RF-86からRF-4系と受け継がれたが、F-15では偵察ポッドの開発に失敗。専用機はなくなる。今後は、レーダーの能力に優れたF-35が、兼任することになる。あるいは、グローバルホークがメインになると。


 以下は、記事単位で。
 文谷数重「図説・わかりやすい上陸作戦の戦い方」は、上陸作戦の解説。陸海空の三自衛隊が、バラバラの方向を向いていて、陸自の水陸機動団は過大な規模。上陸作戦には、制海権・制空権が高度なレベルで確保され、継続的に輸送が行われる必要があるので、旧ソ連にしても、中国にしても、実行するのは難しく、「脅威論」は過大評価だ、とか。
 帆足孝治「名門ロッキード社製戦闘機ヒストリー」は、タイトルのごとく、ロッキード社の戦闘機の話。ロッキードと言えば、どちらかと言うと戦闘機は目立たない感じだな。つーか、第二次世界大戦前後の頃のロッキードって、新興メーカーのくせに謎の政治力だな。どちらかと言うと、隙間埋めみたいな、戦闘機生産だったのに。ステルス機製造の技術の蓄積からか、冷戦後、第5世代戦闘機に関しては、F-22F-35と独占状態に。
 広田厚司「独式水陸両用ヴィークル『LWS』」は、ドイツが開発した水陸両用牽引ボートの話。これ、かわいいな。
 「ニューウエポン・クローズアップ:米空軍T-X候補機」。いつの間にか、レイセオン/レオナルドも、ノースロップ・グラマンも撤退して、ロッキード・マーチン/KAIとボーイング/サーブの二陣営に絞られているが。どっちが勝つか。個人的には、撤退した二陣営を応援してたわけだが。
 藤井非三四「WW2『奇襲』の研究:ドーリットル空襲」。うーん、日本側が予測できなかったのは、当然だと思うが。完全に奇策だし。まあ、防空組織があまりきっちりできていなかったのは確かだろうけど。哨戒部隊が、きっちり機動部隊を捉えていただけ、上出来なんじゃなかろうか。
 布留川司「空自基地訪問:飛行開発実験団XC-2密着ルポ」。C-2のテスト部隊のルポ。強度不足対策の重量増は、あらかじめ見込んだ予備重量の範疇にある。あるいは、自動化が進み、荷役がやりやすくなっている。フライバイワイアで、飛ばしやすい。割と好評と。まあ、こういう記事で不評は出てこないとは思うが。
 小河美津彦「震洋特攻「若桜隊」出撃せず」。撃沈された重巡足柄の乗員から編成された、特攻部隊のお話。出撃する直前に、戦争が終わって、むしろ日本軍の治安維持をやっていた話。