丸山宗利『昆虫はすごい』

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

 まあ、表題どおりの本。昆虫の多様な姿を紹介する。
 飛翔の獲得、そして、生涯の途中で体を作りかえる変態の獲得が、昆虫の多様化と成功に貢献している、と。後者は、幼虫と成体で必要な資源を変えることができる。また、原始的な、変態を行わないイシノミやシミなどは、多様性の乏しい。


 第2章は、様々な生態を、収穫する、狩る、着飾る、まねる、恋する、まぐわう、子だくさん・一人っ子、機能と形、旅をする、家に棲むに分けて紹介する。
 外洋性のアメンボなんか、いるんだ。あとは、植物も昆虫も、「まずくする」ことで捕食を避ける戦略を採用している種類が多いこと。昆虫は、そのまずさを誇示するために、警告色をまとう。そして、それに便乗して、似たような色をまとう種類も出てくる。仁義無用のタダ乗り感がすごい。警告色をまとう虫同士が似たような模様をまとって、捕食者側の学習機会を効率化していたり。
 植物と昆虫の軍拡競争も、印象的。植物は食べられまいと、防御物質を分泌する。昆虫側はそれをいかに避けるか、工夫する。あるいは、植物側が、自身を食べる昆虫の天敵を誘引するというのも、印象的。


 第3章は「社会的昆虫」である蟻をメインとしたお話。実は、生物の総合的なボリュームでは、生態系の上位にいる生き物と。他の蟻を狩る種、植物食の種、キノコを栽培する種、アブラムシなどと飼う種などなど。様々な生態を発展させている。
 これらの蟻は、排他的で、縄張りに侵入してきたほかの種を追い払う排他的な性格を持つ。様々な理由で、蟻同士で戦争を行い、また、種類によっては、多種の蟻の幼虫を持ち帰って、奴隷として使役する種もいる。
 あるいは、蟻のコミュニケーション手段である匂いを身につけ、蟻の巣に侵入寄生しようとする生き物が蟻やその他の種で存在する。しかし、たいがいは、途中で見破られ、そういう種は希少種である、と。潜入から、女王暗殺というのは、なかなか難しいわけだ。
 一方で、蟻の巣に入り込んで暮らしている生き物好蟻性昆虫も、たくさんいると。盗み食いしたり、入り込んで幼虫を食い荒らすものから、食べかすや死骸を食べて、巣の環境向上に貢献する生き物まで。


 最後は、人間と昆虫とのかかわり。吸血性の昆虫が病気を媒介することが多い、と。


 以下、メモ:

 実際、オーストラリアに家畜が持ち込まれたとき、オーストラリアにはヒツジやウシなどの糞に対応できる糞虫がおらず、糞がそのまま残り、数々の問題を引き起こした。結局、あちこちの国から糞虫が導入され、その問題は解決されたのである。p.122

 草食動物の糞を食べる糞虫の重要性。具体的にどういう問題が起こったのだろうか。今だったら、外来種の導入として問題になりそうな…

 このグンタイアリや、さきほど述べたヒメサスライアリ、そしてサスライアリは共生者が非常に多く、まるでそれらにとっての天国のように思える。アリの体表に寄生するダニや、アリにまぎれて生活する甲虫までさまざまなものがおり、バーチェルグンタイアリにいたっては、数百種の居候が一緒に生活している。働きアリの数が数十万と多いため、餌となる幼虫の資源や餌のおこぼれが多いからであろう。p.141

 なんか、中近世の傭兵部隊みたいな感じだな。昔の軍隊は、多数の非戦闘員がついていっていたというし。

 また、数種のリケッチア症は日本の広い地域でツツガムシやマダニが持っている。冷涼な地域ではマダニが媒介するライム病というものもある。これらの病気も症状が重く、治療が遅れると死に至ることが少なくない。
 近年、日本各地でシカやイノシシが非常に増えており、それらが人里に出没することが増えている。それに伴って、それらに寄生するマダニ類も身近な存在になりつつあり、ダニに刺される機会も多くなってきている可能性が高い。
 とくにシカの増え方が異常で、各地で深刻な環境問題ともなっている。これら感染症の予防策という意味を含め、駆除などの早急な対策が必要である。p.213

 感染症と言う観点からも、シカの増加は良くない、と。