チャーリィ古庄『旅客機の運命:Destiny of Airline:日本を去った旅客機たちを追う』

旅客機の運命 (日本を去った旅客機たちを追う)

旅客機の運命 (日本を去った旅客機たちを追う)

 引退した飛行機のその後の運命を追う。
 中古で売れた飛行機はどこかで運用され、買い手のつかなかった飛行機は欧米の保管空港に置かれ、部品取りされ、最終的にはスクラップになる。ワイドボディ機は、A-300とか、DC-10、MD-11と貨物型に改修されて長生きしている感じか。


 巻末の日本を離れた旅客機をチェックした表がすばらしい。労作。80年代あたりから、生き残っている飛行機がいて、それ以前の機体はだいたい廃棄済み。国内線でこき使われた機体は、その後中古で運行されたりすることなくスクラップにされている。ボーイング777や767に引退機のスクラップ率の高さが印象的。あとは、ロッキードL-1011トライスターも不遇感が強いなあ。飛行可能な機体は、ほとんど残っていないのか。
 一方でエアバスA300-600やMD-11は、貨物型の需要が高いのか、改装されて運行されている率が高いのが印象的。B-747も、けっこう古い機体が輸送機として運用されていたりするのが興味深い。
 あと、デルタ航空MD-90マニアぶりも印象的。日本のエアラインを退役した機体が、全部デルタ航空に行っている。日本に導入された機体は、20年そこそこだから、それなりに新しいといったところなのだろうか。


 全体の構成は、アメリカの砂漠に立地する旅客機の墓場ストア空港の紹介の第1部、機種別の退役後の動向の第2部、退役した機体から60機ほどをピックアップして紹介する第3部から成る。
 アメリカのストア飛行場、セキュリティが意外と厳しくて、写真が撮りにくいとか。しかし、胴体の外板を切り取られたり、輪切りになっている機体を見ると、やはり寂寥感があるなあ。


 機種別動向も興味深い。日本航空の破綻、あと、スカイマークなどの新規参入組の破綻が与える影響は大きいのだなあ。
 日本の国内線で運用された機体は、747、767、777と、退役するとあっという間にスクラップに。路線が短く、発着回数が増える国内線は飛行機に厳しい。気圧差のストレスが、飛行時間よりも影響が大きいわけか。
 中古で売れる飛行機は、比較的早くに退役するパターンも。むしろ、市場価値がない機体は、減価償却が済んでいるということで、使い倒すという選択肢もある。全日空のB-767なんかは、そのパターン、と。


 最後は、個別の機体のその後の運命を紹介する。だいたい、他のエアラインに引き取られて、何年か運行された後、スクラップにされる運命、と。
 高知空港胴体着陸したダッシュ8が、日本国内では復帰できず、今はロシアで運行されている。あとは、タイで運行されているドルニエ228。ターボプロップ機好きだなあ。特に後者。
 特殊用途に利用され続ける機体も。地上訓練施設として機体が残されたもの、エンジンのテスト機として運用されている機体、民間軍事会社に購入され空中給油機に改造されたDC-10とか、いろいろあるものだ。