『丸』2019/10号

丸 2019年 10 月号 [雑誌]

丸 2019年 10 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2019/08/24
  • メディア: 雑誌
 特集はメッサーシュミットBf-109
 1935年初飛行の、近代的単葉戦闘機の第一世代戦闘機としては優秀な性能を持った飛行機だったが、本来は、1930年代に退役している飛行機だった。その軽量小型の機体に、無理矢理大型のDB601エンジンを搭載したために、性能は一線級に向上したものの、機体のバランスが崩れ、着陸時の事故率が非常に高い飛行機となってしまった。しかし、次期主力戦闘機たるFw-190の量産が進まない中で、最後まで主力戦闘機として装備され続けた。
 戦時中に活躍した機体は、魔改造済みだったのね。
 本来は、陸軍の97式戦闘機と同じくらいのエンジン、Jumo210で同じくらいの性能を発揮する戦闘機であった。
 小型軽量のエンジンに合わせた小型軽量の機体、細い胴体、薄い主翼は、その後の性能向上の足枷になった。燃料搭載量の増大が難しく、落下タンクも空気抵抗を増やして劇的に滞空時間を増やすほどではなかった。その燃料タンクの場所がパイロットの座席で、L字型のタンクに腰掛けるかたち。しかも、防弾対策は後期型から。燃料タンクが発火すると丸焼けとなってしまう。また、薄い主翼は、武装強化の足枷になった。本命のプロペラ軸に装備するモーターカノンがなかなか実用化せず、貧弱な武装。それをなんとかするために、主翼に20ミリ機関砲を搭載するが、バルジ型の張り出しができて、飛行性能低下。爆撃機を攻撃するには武装が貧弱すぎた。なんというか、隼あたりを彷彿とさせるエピソードだなあ。


 エンジンDB600シリーズの話も興味深い。出力向上への苦闘。
 ドイツの航空エンジンが倒立V型なのは、ちょっとした技術のギャップがあったから。普通のV型は上が広がり前下方視界を妨げる、プロペラ軸が下に下がり大直径プロペラを装備しにくいなどの欠点があり、どこの国も倒立エンジンの試作を行っている。しかし、減速ギアで調整できるようになると、軸の位置が変化し、長所が短所に逆転する。しかし、ドイツでは航空軍備の禁止により民間大型機用の大型・高燃費エンジンに開発が傾斜し、減速装置の開発が遅れた。それが、ドイツで倒立V型メインになった理由である、と。
 最初はJumo210エンジンが搭載されたが、小型軽量エンジンではパワーアップが限界に達し、当初は爆撃機用であったDB610系にお鉢が回ってくる。DB601は燃料直噴式で、大戦初頭の戦闘機エンジンとしては、マーリンに勝るものであった。しかし、その後のシーソーゲームでは不利になっていく。
 ボアアップと圧縮比を上げたDB605Aが投入されるが、これは初期不良に悩まされる。さらに、圧縮比を向上させ、大型過給器を装着したDB605Dが計画されるが、これは開発に難航し、終戦までまとまった戦力を送り出すことができなかった。その対応として、A型に大型過給器を装着したDB605ASが最後の量産型として送り出され、相応の成果を生んだ。
 他にもサブタイプはいくつかあるか、よくわかんないとか、爆撃機用とか。

土井津たけお「“Bf190vs日本陸軍戦闘機”空戦テスト

 日本に輸入されたBf109E型機との空戦テストの話。日本側は、イギリスの新型高速戦闘機たるスピットファイアのシミュレーションを行うようなつもりでBf109を扱った。まあ、略同等くらいの性能だよね。
 一式戦隼は、戦闘能力の低い長距離護衛機として、積極的な空戦を意図していなかった。
 鍾馗、キ60(飛燕の原型)、キ45(屠龍の前身)、97式戦などが試された。鍾馗はこの時点ではそれなりに欧新鋭戦闘機と戦える機体、キ60微妙、97戦は主導権を取られてしまうが格闘戦に徹すれば射撃位置に就かれにくいといった結果。97戦が一方的にやられないというのが安心材料だった、と。
 あとは、次期戦闘機に関する議論、やったりスピードは欲しかったのだな。でも、日本の技術じゃ無理っぽいというあたりが、なんとも。しかし、なんか好き勝手言ってるなあw

竹内修「海洋防衛展示会に見る極東のシーパワー」

 シンガポールのIMDEX Asia2019年のレポート。
 東南アジア諸国の新型艦船の整備状況が興味深い。シンガポールインディペンデンス級沿海域任務艦、対テロ戦を視野に入れたコルベットという感じなのかな。対艦ミサイルは無しか。そういえば、シンガポール揚陸艦って、どういう用途で整備されているのだろうか。
 ベトナムはロシアから導入したゲパルト級フリゲイトインドネシアは国産船体に各国の装備を乗っけたサンパリ級ミサイル艇やオランダのシグマ514フリゲイトをライセンスかノックアウトで自国生産。
 フィリピンも海軍力を増強中。ハミルトン級カッターを購入して使用。展示会にも出している。しかし、大戦型DEほどではないが、ハミルトン級も立派なロートルだよなあ。韓国から2600トン級フリゲイト、ホセ・リサール級を導入。これが事実上の主力艦になるのかな。ミャンマーは中国の支援を受けた国産フリゲイト、チャンシッター級を。タイは、韓国の輸出用フリゲイトの設計をベースとしたプミポン・アドゥンヤデートを出場。
 韓国の、東南アジア諸国への艦艇輸出の実績がけっこう大きいのだな。
 あとは、アメリカの西太平洋インド洋地域でのプレゼンス低下を補うべく、海自やオーストラリア海軍の参画が求められている状況とか。

高村聰史「重巡『摩耶』発見される」

久野潤重巡洋艦『摩耶』パラワン水道にに没す」
 発見された重巡摩耶の姿と、その撃沈の経緯。大戦後半の日本軍の潜水艦にやられっぷりはひどいなあ。敵の位置を全然認識できない。マリアナの空母二隻といい。魚雷4本喰らうと、重巡と言えど、あっという間に沈む。
 その後、生き残った乗員は武蔵に移乗。武蔵もまた撃沈される。武蔵の浮沈ぶりが凄いなあ。大概撃沈された軍艦って、かなり脱出できなかったりするのだけど、駆逐艦が横付けして脱出できるって、ダメージコントロールが見事だったのかねえ。
 あとは、摩耶の乗員が、戦死した武蔵乗員に代わって戦っている姿とか。

宮永忠将「フランス選管物語第五回:新型戦艦開発計画2」

 海軍軍縮条約体制化での、戦艦建造計画。
 老朽化が進む既存戦艦の代替をどうするか、さらに、ドイツのポケット戦艦の出現ですったもんだするフランスの建造計画。結局、ダンケルク級二隻の建造が決定。これも、火力をどうするかでもめる。さらに、ダンケルク級に刺激を受けたイタリアが新戦艦の建造を計画し、それに対抗する戦艦の建造を強いられる状況に。

竹内修「無人機ホットライン第三回:自爆型ドローン」

 長期間滞空できて、ものによっては使わなければ回収できるミサイルといった趣だな。低強度紛争やゲリラ・テロリスト対策用といった感。安くて使いやすいというのは、大事な要素なのだな。

石橋孝夫「日本海軍の仮装巡洋艦 12』

 昭和に入ってからの、国家助成による優秀船舶確保政策、「船舶改善助成」。これによって、高速の貨物船やタンカーが多数建造され、後に軍に徴発されて運用される。このような民間船舶の軍用転用を前提にしないと、大規模な外征作戦は展開できなかった。
 スクラップにした船も、どこかでモスボール保管しておけば、後々足しになったんじゃと、後知恵では考えるが…

広田厚司「最強ファイターP-51ファミリー」

 個人的には、アリソン・マスタングが好き。

佐山二郎「“明治軍用気球”研究&開発事情」

 西南戦争時には、とても実用に使えるものが作れなかった。その後、ヨーロッパから気球を輸入するが、輸送中に気嚢が劣化して実用に使えず。ガス発生器と係留車が参考になった。日露戦争時には、ゴム塗料で実用的な気球が出現し、旅順要塞の砲撃観測に利用された。互いに気球を運用したり、対気球制圧射撃を受けたり。
 この時点でも安定した運用は難しく、操作ミスによる損傷。その後は、訓練中に終戦で復員、と。

荒木雅也「豪の無人戦闘機計画」

 有人の戦闘機と組んで、センサーの役割を果たす飛行機という構想で、ボーイングと組んで研究中。アメリカの中距離核戦力全廃条約の抜け道的な感じらしい。

すずきちはる「海を越えて、百年前の災害支援」

 マーシャル諸島マジュロ環礁に残る、1918年の高波災害支援を記念する石碑。現在も綺礼に維持されているあたりに、現地の人々の思いが感じられるが、自分たちで援助してその石碑をつくるってのが、ちょっと露骨だなあ。