『世界の艦船』2024/4号

 今号の特集は、「超大型水上戦闘艦の時代」ということで、各国で建造、計画されている1万トン超えの水上戦闘艦を「超大型水上戦闘艦」と定義して、紹介していく。米軍の主力であるアーレイ・バーグ級は1万トン内に収まっていたけど、日韓の同型艦は旗艦機能や武装増量で1万トン超え。さらに、後継のDDG(X)も1万トン超え。というか、後者は13000トンだから、かなり大きくなるな。あとは、中国の055型も正統的に大型化した感じかな。
 ドイツの126型フリゲイトとイタリアのDDXは突然、大きくなった感じがあるなあ。イタリアの方は、まだ仕様が固まっていないようだ。一方、126型は前級が実質、高速輸送艦なのに比べると、汎用駆逐艦として使えるようになっているけど、烈度の高い戦闘海域に投入できるか怪しい感じがする。ドイツのポスト冷戦型戦闘艦は失敗続きだなあ。
 ロシアの巡洋艦群とアメリカのズムウォルトは別枠という感じだなあ。黒海でのモスクワの撃沈を鑑みるに、ロシアの巡洋艦は現在のミサイル兵器に対抗できなさそう。ズムウォルトは、いらない子状態から、極音速ミサイルのプラットフォームに。余裕がある船体だけに実験艦としては最適なんだろうけど…
 中国の055型の解説が興味深い。ずいぶん前から構想自体はあって、紆余曲折を経て、21世紀に入ってから現実化、と。一挙に8隻就役しているため、基本的には保守的な設計が行われている。計画段階では、統合電気推進とか、電磁兵器の類いの搭載も考えられていたけど、それらは将来の改良型に搭載される方向、と。
 近年の水上戦闘艦の大型化は、電磁兵器やレーザー兵器、レーダーや情報システムのために発電量の増強が要請されたのが大きそうな気がする。


 他の記事としては、レールガン・レーザー兵器開発の現状を紹介する記事、海上保安庁の災害対応の記事、連載の「名艦クライマックス」、ニュース記事など。
 「レールガンと高出力レーザーの最新動向」は題名通りの題材。レールガンにしても、レーザー兵器にしても、艦の武器システムへの統合が大きな壁、と。レールガンはどこも停滞気味のようだ。アメリカにしても、レールガン用の誘導砲弾を火砲から撃てばいいんじゃねという空気になりつつある模様。レーザー兵器はドローンを安価に迎撃するシステムとして開発が進んでいる。もっと低出力で済む、光学センサーを無力化するレーザー兵器の開発のほうが進んでいる、と。
 「海上保安庁の機動力を活かした海陸を問わない災害援助活動」は、海保の災害対策のお話。気象に翻弄される海上での救難活動を本務としているだけに、陸上でのヘリの運用は電線などの障害物を除けば、逆に楽なのだとか。全国単一の文民組織だけに、動き出しが早くなる。都道府県の消防警察は、まとめるのに時間がかかる。自衛隊は要請が無いと動けないのに対して、即時に航空機を被災地に回せるという。阪神大震災の時の経験談が興味深い。家族を置いて公務に出てしまって、他の公務員家族と給水で揉めたお話とか、海保の航空機の情報収集活動が槍玉にあげられたけど、結局、他の人間も想像できなかったということで不問にされたお話とか。
 「名艦クライマックス」は、ドイツの軽巡洋艦、三代目エムデン。戦間期、活動が制限されたドイツ海軍待望の新造艦。見た目は第一次世界大戦型の軽巡だけど、船体の組み立てに電気溶接が導入されるなど、新技術のテストベッドになった。しかし、クライマックスが戦間期の遠洋航海による日本来航なのか。調べると、結局、練習艦任務がメインだったようだし。というか、ドイツ軽巡、基本、いいところないよなあ。
 ニュースでは、中国が新造船のシェア50%超えという記事が印象深い。中韓で7-8割のシェアになって、日本は10%そこそこか。そりゃ、造船事業からの撤退が相次ぐよなあ。


 写真ページでは、中国の建造中の空母「福建」の姿や記念艦となっている戦艦テキサスの修理作業の模様、チビタベッキア港のフェリーの姿などが印象深い。空母「福建」の電磁カタパルト、どこまでモノになっているのだろうか。あと、ド級戦艦のバルジを外した姿が興味深いとか、高速フェリーかっこいいとか。


 新連載の「世界の艦船フォトミュージアム」と「帝国海軍雑記帳」が興味深い。
 前者は、スウェーデン海防戦艦スヴァリエ級となかなか渋いチョイス。砲を一方向に指向している姿がなかなかにかっこいい。満載排水量7688トン、速度22.5ノット、主砲は28センチ連装砲塔二基。重巡洋艦相手には優位になるかなと言ったところか。戦艦相手にはちょっと無理そうな感じかな。
 後者は、キャンバス製のシューターやワイヤーによる負傷者移送訓練の姿が興味深い。上部構造物で負傷者を担架で下ろすの、難しいのかな。とはいえ、大口径弾の直撃を食らったら、こういう移送は無理そうな気がするのだが。